「お母さんだよね?…お母さんいるんだよね?」



その問いにお母さんはすぐに答えてはくれなかった。



「どうして? おばあちゃんが言ってたよ。
お母さんは私と会えないって言ってたのに」



お母さんは私に会う事ができない。



そうおばあちゃんは言っていたのに、どうして?



《響が守りたかったから。響を死なせたくなかったから、大切な何より大切な存在だから》



「………」



お母さんは、幽霊になっても私を守ろうとしてくれているんだ。



私はいつも不思議で仕方なかった。



どうしてそんなにも必死に私を守ろうとしていたのか、ようやく分かった気がした。



(私には何の価値もないのに)



それは親の努めだから?



子供は親にとって何より大切で守るべき存在だからだろうか?



《そんな事ないよ、響は私にとって何より価値があるもので、生まれてきた事に意味があるの。…たとえどんな運命だとしても。
それに誰だってそう、生まれて来なければいい人間なんていないから》



「………」



どんな人間にも意味がある。



そっか、じゃあ葉月くんと出会ったのは意味があった事だったのだろうか。



だとしたら、美実さんも白石さんも同じ事が言えるのだろう。



でも、美実さんにその事伝えても理解してくれるのだろうか?



(私にできるのかな)



私はいつだって守られているだけの存在で、弱くて怖がりな人間だ。



変わる事なんてできない弱くてしょうがない。



それが私という存在だ。



けど、お母さんはそんな私をいつもいつも守ってくれていた。



私は必死に守られる程、価値も意味もないのかしれない。



でも、お母さんからすれば価値も意味もあるんだって、そう思える存在なんだ。



何だろう。



私って何なのだろう。



自分が悔して何もできなくてしょうがない。



それでも、勇気を出さないと意味ないんだなってそう思ったんだ。



私は…不完全で弱虫で意気地なしで怖がりだけど、自分に意味があるって証明したい。



理解したい。



お母さん、私、強くなりたい。



精神も心も強くなれる私になりたい。