「あなた可哀想な人ですね」



これでも、最高の嫌味のつもりだったんだけど。



「…そうね。でも、あなただって同類でしょ?」



(同類…)



ああ、確かに俺は似ているかもしれないけど、腐ってはない。



「何言ってるんですか? 俺はあなたのように腐ってませんよ。感情は壊れてるかもしれせんけど。
返してください、美沙樹を」



「……」



美実さんは蔑むかのように俺を見る。



屈しない。



今は絶対に屈したりしない。



美実さんはそのままズカズカと俺に近づき、胸ぐらを掴み睨みつける。



「!?」



絶対に屈したりなんかしない…しないから。



震えなんて止まれ。



震えなんていらない。



「あんた、いつからそんな目するようになったの?
以前のあんたいつも怯えていたくせに。あの子が変えたって言うの? 弱くて守られているだけの癖に」



「…み、美沙樹は…弱くなんてない。あの子は俺よりもずっとずっと心が強い子だ。あなたみたいに…腐った人には分からないでしょうね」



「くっ」



美実さんは乱暴に胸ぐらを離す。



「あんたふざけんてんの? いつだってあの子を殺せるのよ。こんなだったら、あの時殺せばよかった?」



「…あなたは人を傷付ける事しかできないんですか?
人を傷付けて何になるんですか? 結局、残るのはいつだって自分自身の心ですよ?」



脅しでも何でもすればいい。



美沙樹の助ける方法を見つけれれば、俺が傷付けられようとも何の苦もないから。



「あなたは誰にも愛されなかったからって、復讐のように人を傷付けて、傷付いた相手の感情など思った事ありますか? …ないですよね?」



「何が言いたいのよ? ある訳ないじゃない?」



「ですよね?」


「あんた喧嘩売ってんの?」



「別に売ってませんよ。ただ、自分のやっている事に何の意味も持たないって事を理解してほしいだけです。
復讐して何が残るんですか? 達成感だけでしょ。その後はどうするんですか? また殺すんですか? 腹を立った人間をまた殺すんですか?」



「あんたねっ!」



腹立てばいい。



もっと怒り狂えばいい。



手を出せばどっちにせよ終わりだろう。



「あんたのそういう所大嫌いだったのよ。
ずる賢い所も全部」



「知ってましたよ…全部」



「あんた、本当は似てるでしょ、私と」



「かもしれませんけど、あなたと一緒にしても心外ですよ」



俺って自分が思っている程に黒い人間なのだろうか。



でも、それでもいい。



それが俺で俺だから。



母さんはどんな気持ちで復讐していたのだろうか。



けど、どんな感情でも力任せに何かをしたくない。



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