片隅に見えたのは美実さんの消失感を失った横顔だった。



その瞬間、空地に大勢の人が乗り込んでくる。



「ありがとう…」



「!」



連れて行かれる瞬間、美実さんは私に些細な声でお礼を言ったのだった。



振り向いた時、不思議な事が起きた。



お母さんの声だけじゃなくて、姿が見えて笑っていたんだ。



私は思わず追おうとしたけど、お母さんは首を横に降ったんだ。



そして、口パクでありがとうって言った。



「…っ」



(おかしいね、美実さんは私を殺そうとしていたのに、それなのに、お礼言うなんて変だよね)



「私、助けれたのかな…」



「わかんないけど、伝わったんじゃないかな」



虚しくなった、悔しくなった、悲しくなった、辛かった。



みんなみんな最低で最悪な選択をしたから過ちができたんだ。



ねえ、どうして人は間違いを起してまで求めるのだろう?


人を恨むのだろう?



そんな過ちを起しても何も残らないのに。



「歌菜…」



白石さんんも同じように連れて行かれた。



その姿に葉月くんは、物寂しそうな目で白石さんを見つめていた。



「響ちゃん!」



「響!」



(あっ)



ここあさんとお父さんが向かってくる。



行かないと。



(あれ?)



突然、体に力が入らなくなり、先程感じていた痺れが現れた。



ああ、そうか。



お母さんが力を貸してくれていたから、動けたんだ。



(だめだ、もう無理)



その直後、体がフラっと傾き地面へと倒れそうになる。



「美沙樹!? ぐっ……っ」



意識を失う前見えたのは葉月くんの痛む表情だった。