「みんなね、後悔してる。みんな後悔してみんなどうしたらいいのか分からないでいるんです。傷付けた事、取り返しの付かない事、戻らない事、選択のすべてを間違って、みんなどう接したらいいのか分からないから何も出来ないんです。助けたくても助けたくても助けれないんです。自分が怖いから美実さんの心が怖いから。
みんな臆病で強くないんです」



人には弱さというものがある。



それとどう向きうかで、何かが変わるのかもしれない。



優しい心ってどんなのだろう?



強い心ってどんなのだろう?



「何よそれ…どうせ私強くなんてないわよ…弱くて人を傷付ける事しかできない哀れな人間よ」



「美実さんは本当はこんな事したかったんですか?」



「そんな訳ないじゃない…私はただ誰かに理解されたかっただけよ。けど、私が失くしたのよ」



感情が開いていく。



あやふやで不安定でぎこちないものだけど、少しだけ開いていく。



「知っていたの、由理華が手を差し伸べてくれていたけど、感情がそうさせてくれない。だって、感情がそうさせてくれないの」



感情…?



「だってそうじゃない…心原の血は呪われているから」



呪われている…?



なぜだろう。



言葉としては驚きとして捉えられるのに、なんとなく他人事ではないのは、私も同じ血が流れているから?



それとも、私の感情もおかしくなっているからだろうか。


「私は…誰かに理解してほしかった。だから、憎んだ相手を殺して存在価値を見せたかったの。あんたを傷付けたのだってそう」



「!」



そう言って微かに葉月くんの方へ目を向ける。



(傷付けたって何を?)



「私の存在価値を分からせたかっただけよ。
そして、脅して結婚したのだって存在価値を分からせるためよ」



「だから、父さんを利用したんだ」



「ええ、全部利用したのよ。あんたの行為も全部。
分からせたかっただけよ。誰も理解してくれないなら殺すしかないじゃない」



殺したって存在価値など理解されるはずない。



ただ、恐怖の人間として怖れられるだけ。



「そんなの存在価値の意味なんてないですよ」



「知ってるわよ、けど一度復讐すると決めた相手をしなきゃ気が済まなくて、止まらなかったのよ」



ああ、そうか。



美実さんはただ可哀想な人だったんだ。



愛される事を知らなくて、理解される事を知らなくて、信じてくれる事を知らなくて、誰も見せれない感情を持っている。



けど、本当は手を伸ばせる筈だったのに、全部全部無視したんだ。



そして、取り返しの付かない事をしたんだ。



「なんで…あんたは心原の血を持ってるのに…そんなにまっすぐなのよ」



美実さんはか細い声でそう私に訴え掛けた。



「えっ」



だけど、私は言っている言葉がよく分からず答える事ができなかった。



(…どういう意味なんだろう)