叩こうとする美実さんに強気の姿勢を見せる。



「すればいいじゃないですか。 …叩きたかったら殺したかったら、すればいいじゃないですか!」



「美沙樹?」



これは脅しだ。



本当はそんな事は思っていない。



痛いのだって死ぬのだってどちらも嫌だ。



けど、こうでもしなきゃ、この人には伝わらない気がしたんだ。



(そうでしょ、お母さん)



「でも、それであなたの復讐になればいいですけど。
でも…本当に人を殺して復讐の意図に繋がると思っているんですか?何も残りませんよね?ただ達成感だけで、残るのはいつだって後味悪い罪悪感だけですよね?」



「…何が言いたいのよ」



「人を殺して何の意味を持つんですか?それは自分を満たしてくれるんですか?感情どうなっているんですかね?恨んだ人間を殺して、そうして犯罪者として自分の存在意義を残す為ですか?」



まだだめだ。



もっともっと深く出さなきゃ。



美実さんの感情を。



もっと怒ったらいい。



もっと苦しんだらいい。



私はただ美実さんの心を出してほしいから、わざと煽るような言い方をしているだけだ。



本来ならそんな追い詰めるような事は言ったりしない。



「美実さんは本当はずっとずっと言えない何かがあったはずでしょ。人を傷付けても苦しむだけです。お母さんだってここあさんだって美実さんの事、ずっとずっと信じていたんですよ。お母さんはずっと信じていたかったんですよ。でも、それを失くしたのはあなたでしょ?」



その時、心から震える声が聞こえてきた。



弱さと虚しなと悔しさが同時に迫ってくる感じだ。



《うるさいうるさいうるさい!何も知らないくせに、何も分からないくせに。なんで的確にぶつけてくるんだよ!》



(うん、何も知らないし何も分からない。
でも、私はあなたこのまましたくないの、これ以上)



おばあちゃんやお母さんに言われたからもあるけど、助けようと思ったのは自分自身だ。