「優弥、来てくれると思った」



歌菜は俺の手を握り胸の所に持っていく。



「だって優弥は優しいから。
あたしの事ほっとけないんでしょ?」



「…別に優しい訳じゃない」



「知ってるよ。わざとみんなに優しくしてた事。
知ってたよ。でも、あたしには特別優しかったじゃない」



「それは…」



歌菜を元に戻ってほしかったからで、ただ自分の余裕を持たせたかっただけだ。



だから、歌菜を思っての優しさを向けていた訳じゃない。



「お前の為じゃない、俺の為だよ」



俺は自分の都合しか考えられない人間だから。



そういう感情しか向けられないんだ。



周りの事を考えたいと思っても、真っ直ぐにはどうしてもなれない。



「うん、知ってる。でも、あたしを思っての行動でしょ?違う?」



確かにそれは当たっているのかもしれない。



けど、けどけど、けど、歌菜を思っての行動じゃない。



いつだって、いつだって、自分の為だから。



゛本当に?゛



違う…美沙樹の事だけは美沙樹の為を思っての行動だった。



あの子は何が違うんだろう。



何がそんなに歌菜や他の人と違ったんだろう。



わからない。



わからないけど、どうしてもそうしなきゃいけない事があったから今ここにあるんだ。