葉月くんの事はすごくすごく気になった。



けど、今 美実さんに言わないとダメになってしまう。



この人を救えなくなってしまう。



心を黒くしたままだ。



「美実さんは本当はお母さんが羨ましくて、でもお母さんばかりちやほやされるお母さんが疎ましくて、その反動で反抗ばかりしているけど、本当は一緒のように褒めて欲しかったんじゃないですか?」



「っ」



「ここあさんが言ってました。何か褒めて貰えるものはないかって探して探したって。でも、何やっても上手くいかなくて、こればかりは才能だからって、最初はおばあちゃんやお母さん達も酷くなかった筈でしょ」



「なっ」



おばあちゃんは教えてくれた。



『いつからかはわからないけど、美実が変わってしまったから、ああなった』って。



「おばあちゃんやおじいちゃんがしていた事は最低な事かもしれない。でも、そういう風にさせたのはあなたでしょ?あなたが与えたんじゃないですか?それにチャンスだって何度もあったはずでしょ?けど、あなたはそれを無視したんですよね?おばあちゃん達はずっと悔やんでた。でも無視したのはあなたもお母さんと同じような事をずっとしてた。違いますか?」



この事はここあさんからも聞かされていない。



全部、おばあちゃんから聞いたものだ。



そして、お母さんの部屋から出てきた1冊の日記がそう記されていた。



だから、かけに出して見ようと思ったら、案の定その通りだった。



なぜなら、美実さんの心が酷く揺らいでいるから。



狂気の感情が恐ろしく圧倒されて辛いものがあるが、それ以上に心が酷く不安定さを感じる。



「本当は理解してほしかった。優しくして欲しかった。褒めて欲しかった。手を差し伸べて欲しかった。愛して欲しかった…じゃないんですか?」



「ぐっ…」



まただ、また今度こそ打たれてしまう。



「美沙樹…!」



振り下ろす手を葉月くんはしがみつくように止める。



「葉月くん…あ」



左手を見ると、いつの間にか応急処置がされていた。



(よかった)



でも、痛いのに無理してまで助けなくてもよかったのにと思ったが。