俺はゆっくりと空き地へと向かっていくが、その足取りはスローモーションかのようにゆっくりと流れるように感じた。



その後ろからここあさんと美沙樹のお父さんと2人程の警官が付いてくる。



付いてくる人は入り口付近で隠れるように様子を伺う事になった。



そして、そっと空き地へと足を踏み込んだ。



「あ、優弥! 優弥…」



俺の存在に歌菜はすぐに気付いた。



「……」



すぐに辺りを見渡すと、広い空き地に美実さんと一台の車がポツンとあった。



(美沙樹はどこ?)



あの車は盗んだものだろうか?



いや、でも…盗んだ被害は出ていないと警官の方は言っていた。



「優弥ーー!!」



歌菜は俺の姿に嬉しそうな表情で飛び付いてくる。



「ちょっ…っ! …離れて」



「えっ何で」



そんな歌菜をぐいっと突き放す。



「美沙樹はどこ?」



感動の再会など必要性などない。



俺はただ美沙樹が無事ならそれでいいから。



「…別にいいじゃん、あんな子の事なんて」



「どこ?」



歌菜の邪険にする態度に俺は無視して、再度尋ねる。



「…いるよ、ちゃんと」



俺の問いに黙って座っていた美実さんが立ち上がってくる。



「!」



「…久しぶりね、優弥」



「っ!?」



ああ、ムカムカする。



腹立たしい。



イライラする。



吐き気がする。



傷跡が疼く。



発作が出そう。



けど、ここで我慢しないと、助けれるものもできない。



「あんた私の事、吐き気がする程嫌いじゃなかったけ? よくよくノコノコ来たわね」



相変わらず嫌で癪のある喋り方をする奴だ。



「そんなにあの子が大事なの?
感情のないあんた大事なものなんてあったの?」



確かに俺の心は壊れているかもしれない。



けど、あんたよりはだいぶマシで腐ってもない。



「別に、人の感情を奪うあんたよりはだいぶマシだよ」



「奪うですって?
あんたは勝手に自滅しただけでしょ?」



「っ」



(堪えろ! 堪えろ!)



ここで倒れたら元もない。



何の為にここに来たなんて分からないから。