願う先にある想い

「私はただみんながみんな幸せならそれでいいの」



その中に美実が加わっててほしい。



私の願いはただそれだけ。



人の想い程 浅はかなものはない。



けど、浅はかだけど優しい。



優しいけど浅はかだ。



「わかります…。俺だって本当は手を差し伸べようとしたんです。でもあの人は俺の想いに簡単に拒否ったんです。それでも俺は良い人と思われたい願望があったとしても手を差し伸べていたかったんです。歌菜がおかしくなった時だって、手を差し伸べてあげたかったんです。でも、俺はそれが出来なくなったんです」



そう言って優弥くんはまた左の二の腕を握る。



「俺は自分が嫌いです、大嫌いです」



「どうして?」



優弥くんはそこらの男の子よりは何倍も優れていて羨ましい程の容姿だというのに。



でも、自分の事を嫌う人は多くいるはずだと言える。



きっと彼もそういう1人なのだろう。



「どうしてって…母親と似ているからじゃないですかね」



「…お母さんが嫌いなの?」



おそらく嫌いじゃなくて、似ている場所があるから嫌いなんだ。



「いえ、好きですよ。俺の親戚からは嫌われていますけど。有名な人だったんですよ、いい意味で」



優弥くんはある意味で不思議な人なのかもしれない。



けど、響ちゃんの事はどう思っているのだろうか?



何の意思で動いているのだろうか?



ただ、歌菜ちゃんという子の為に動いているとしたら、響ちゃんはどうでもいいのかな?