美沙樹は美実さんに狙われている。


おそらく美沙樹を殺そうとしているのだろう。



だけど、すぐには殺さないのだろう。



俺の時だって襲い掛かってきたとはいえ、殺しはしなかったから。



つまりは殺意を向けていないから、だから殺す理由がないのだろう。



美沙樹は美実さんの事を怖い筈なのに、天仲さんにまだ言えていなのに、それでもまだ何かを真っ直ぐに見ようとしているような気がした。



気弱で怖がりなのになんでそこまで強いのだろうかと思った。


疑問でしかなかった。



俺には到底出来そうな事ではなかった。



だからかもしれない、美沙樹には最初から羨ましさと憧れみたいなものを感じていた。



俺にはないものがほとんど美沙樹は持っていた。


俺は父さんに大切に育ってきたにも関わらず、美沙樹のようにはなれなかった。



壊れた感情のまま偽りの自分でしか感情を見せれなかったんだ。



この違いって何なのだろう?


違いって…何?



それはすぐに理解した。



俺はいつもいつも悪い方向でしか自分を向けれなかったからだ。


良い方向など自分には害でしかなかったから、どんなに頑張って前を向うとしても出来なかったんだ。


『ああ、本当に情けない…情けないな』



けど、美沙樹が連れされた時、俺は今度こそ心の精神が壊れそうになった。


けど、すぐに保てたのは天仲さんの存在だった。


その人は美沙樹のお母さんと同じように心が理解出来る人だった。


どうして、美沙樹の周りの人はみんな優しい人間が多いのだろう。


羨ましいという以前に自分の浅はかな感情に幻滅をしたんだ。



心の精神が壊れている俺にはあまり眩しすぎて辛かった。


俺には何もないのに、何も残っていないのに。



酷く酷く自分が浅はかで愚かで忌々しかった。


何が正しいかなんて分からない。


何が正解などもわからない。


それでも、自分に覚悟などもない。


けど、美沙樹を失わせたら今度こそ自滅しそうだ。


感情のすべてに鍵を付けてしまったら今度こそ俺は終わりなんだ。