願う先にある想い

(……あれ、ここどこだろう)



目を覚めると、見知らぬ車の中にいた。



頭がぼーっとして今いち覚え出せない。



と、車の外から誰かの話し声が聞こえてくる。



(誰…)



ぼーっとする頭をゆっくりと動かし窓の方へと目を向ける。



「っ!?」



その姿に驚愕して思わず、また寝転ぶ。



(ああ、そうだ)



私、美実さんに無理やり車に連れ込まれて、白石さんに何か睡眠薬のような物を飲まされて気を失ったんだ。



「どうしよう…!」



ここがどこなのかわからない以前に今動いたりしたら、何をされるのかもわからない。



何かできるものはないかとバレないように辺りをキョロキョロするると近くに私の鞄が置いてあった。



「私の鞄…!?」



鞄を足で取り寄せようとしたら、足音が車に近付いてくる。



その音に足を止めてまだ目覚めていない振りをする。



ゆっくりと扉が開き、一瞬ビクッとなる。



そして、そっと手が伸びてくる。



(これは美実さんだ)



心の感覚で分かる。



今の心は穏やかだけど、奥底に眠る黒いオーラが私の頭に響く。



だけど、心の声はボヤが掛かって聞こえない。



何でこの人はこんなにも苦しい感情を持っているのだろう。



穏やかだから分かる。



恨みの心を感じるけど、どこか悲しそうにも感じる。



本当は…誰かに気づいてほしかったんじゃあ。



「ねえ、起きた?ああ、起きたね」



起きている事は気付いていたんだ。



私は勇気を振り絞ってゆっくりと起き上がる。



「…っ」



「………」



この人から見える黒い感情は一体何を示しているのだろうか?



美実さんはしばらく私にこう言う。



「悪いけど、あなたを利用させてもらうわ」



(利用?)



「大丈夫、安心して。私の野望はここあ以外の家族を殺す事。恨まないでね、この家で生まれたあなたの運命。
不幸だと思ってね、みんなの前で殺ってあげる。だからそれまで眠っていてね」



「!?」



何かを口に入れられた。



「何…」



「大丈夫。毒は入っていないから」



(あれ、意識が遠のく)



「ねえ、美実さん送ったよ。これでいいんでしょ」



白石さんの声が聞こえる。



「でもいいの?場所を教えて。運が悪かったら捕まるんだよ、あたしも共犯だって思われる。それに…もうTVで流れてるよ」



「いいわよ、別に。
どうせ、この子は私達に利用されて殺されるだけよ」



「でも、本当は殺す気ないんでしょ」



「まあね」



(殺す気がない?)



そういえば、美実さんはお母さんに恐ろしい程の狂気を向けていた。



でも、私には一切向けていなかった。



それはなぜ…?



(だめだ、これ以上は持たない)



そこで私の記憶は途切れて、また目が閉じる。