居場所からしてそう遠くに離れている訳ではないようだ。



「でも、なぜわざわざ知らせたりしたのだろう?」



美沙樹のお父さんは疑問そうに尋ねる。



「歌菜は俺を待っているんだと思います。あいつは俺に見つけてほしいんじゃないですか?
そして、その考えに美実さんは合意している、そういう事じゃないですかね」



「けど、好きだからといって相手を困らせるのはあまり合理的じゃないんじゃないか?」



「それは最もですよ」



「でも、一度好きになったら誰しも自分が一番に思ってほしいという気持ちはあるかもしれないけど、その子もそうじゃないのかな?」



誰しも…か。



もしそういう真っ直ぐな気持ちで俺に向けているとしたら、どうして酷い事ができるのだろう。



「どうでしょうね?あいつは単に愛されたかっただけなんだと思います。俺が離れるんじゃないかって、恐れていたんでしょうね」



「なんだか、美実と同じね。あの子も愛されたかったのかな」



(……愛されたかった?)



もし、もし美実さんも歌菜と同じように離れてほしくなかったから、だからあえて俺に傷を負わせたのだろうか?



(っ)



傷が疼く。



いつも美実さんの事があると怪我した箇所が疼いて仕方ない。



そっと服の上から怪我した箇所に触れ、二の腕を掴む。



「俺にはわかりかねませんよ、キチガイな行動なんて…」



それでも、歌菜を手放したのは俺自身だ。



俺が勝手に離れて勝手に終わらせていたんだ。




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