それは、東京に来てようやく不眠症と恐怖心から開放されて、心に余裕が出来たと思った直後だった。



おそらく、今まで無理していた感情が現れたのだろう。



『はあ…はあ…はっ…何?…うっ…苦しい』



安心感から来ているのか分からないが、感情が不安定でどこに持っていけばいいのか分からなくなりパニック状態になっていた。



ナイフで刺された箇所が酷く痛む。



『優弥ーただいまー』



ちょうど父さんが帰ってきた所でもがみ苦しむ俺を発見してくれた。



過呼吸になっていたらしく、父さんに支えながらなんとか呼吸法を整えたら少しだけ息を吸う事が出来た。



とりあえず、その後病院へと向かい診てもらい、検査の結果なぜか心療内科へと通された。


医師から『心がおかしくなったのはいつから?』『何か違和感みたいなものは感じないか』とか根掘り葉掘りと詳しく問い詰められ、俺は出来るだけ正直に答えた。



ずっと嘘偽りを向けていたが、この時だけは本心を向けたのだった。



俺の答えた内容に父さんは絶句した表情で隣に座っていた。



俺にはパニック症と酷く傷付いたトラウマのような症状にかかっていた。


おそらく原因としては今まで傷付いた精神的感情が開放されたものの、その安心感をどこに持っていけばいいのか分からず不安定になりパニックを起こしているらしい。


パニックはしばらくしたら落ち着くが、トラウマの症状は難しいとされた。



パニックと動揺に発作が起きる可能性があった。



ただ心の精神については、一度壊れてしまった感情を戻すには何か刺激を与えないとまた同じ繰り替えになりそうな言い方をされた。



俺の場合は人格が狂気になるではなく、鬱みたいな正気が一切なくなる感じだった。



何もする気ができない。



何もしたくない。



そんなノイローゼのような感覚だった。



それが俺に起こった全ての症状だった。



自分があまりにも脆く弱々しくナイーブな人間だと初めて知った。



こんな自分は醜いって…。



どうしようもないって…。



悔しくてどうしようもなかった。



それが俺という存在だったんだ。