願う先にある想い

俺が倒れた連絡を受けて父さんはすぐに駆け付けてくれた。



『優弥、大丈夫か?』



『ここは?』



『家だよ、大丈夫か?今あの人いないから』



『そう』



どうやら不眠症で倒れたらしい。



けど、倒れたのはそれだけじゃない気がする。



父さんはそんな俺の心を見透かしたのか、俺にある言葉を向けた。



『なあ、優弥。お父さんはお母さんのように頼りないのかもしれない。けど、俺にとって優弥は何より大事で大切だから、辛いなら教えてほしいんだ。お父さんはお母さんみたいにあまり気が利く人間じゃない。それでも、もし優弥が無理しているようなら、教えてほしい。
お父さんは出来る限り助けたい』



『……っ』



父さんにだけは心配掛けたくなかったから何も言えなかった。



やはり父さんは俺よりいや母さんより強い人だ。



『優弥!どうしたの!?えっえっ』



『父さん…っ助けて…もうっ…俺…無理だよぉ…これ以上…壊れたままなんて嫌だ』



子供のようにボロボロと泣く俺を父さんはぎゅっと抱きつき『ごめんな、こんなに追い詰められてたなんて、気付いてやらなくて』と何度も謝っていた。



父さんはいつも謝ってばかりだった。



母さんの時もいつもいつも謝ってばかりだった。



だけどそれは、家族を愛する父さんの愛情表現だったんだ。



ちょうどその頃、父さんが東京の方へと引っ越す事が決まっていた。



それは前々から決まっていた事だったが、本当はもっと先の事だったが俺の状況を見て早めたそうだ。



そして8月からは東京の方へと行く事になった。



東京への引っ越しの事とついでにある決断を俺に告げてくれた。



『美実の事は俺に任せて貰えるか?』



『何をするの?』



『大丈夫、きっと別れられるから』



『?』



その時の父さんの表情は気が弱い父さんではなく強い父さんの表情だった。



『その、だからもうしばらく辛抱できるか?』



『大丈夫』



『ありがとう』




普段の俺の父さんはとても頼りなくて、記憶の中では母さんには頭が上がらなくて、けどそんな2人だったけどとても仲良しだった。



以外にも簡単に離婚や引っ越しは済ませる事が出来た事が意外だった。



ようやくこれで俺の心の精神も穏やかになると思っていた。



けど、本当の苦しみは抜け出してからだったなんて知らなかった。