母さんの精神障害は治ったように見えても傷付いた体や心は治っていなかったんだ。



母さんはきっと普通の人間として生きたかったのかもしれない。



気が強く見せていたのは、自分が弱い事を悟られない為。



だから、暴力で消していたと父さんは言っていた。



本当は弱くて守ってあげないといけない人間だった。



あの頃の母さんにとって信用できる人間は1人もいなく、母さんの両親祖父母だけが信用できる人間だった。


山に登るのが趣味だった父さんはその日興味本位で1人で暗い内に山に登って、日が昇るまでに山頂に登るという目標で山頂へと登るとそこには母さんと出会ったのだと。



ナイフで体を刺して飛び降りようとしていた母さんを止めたのは誰でもない父さんだった。



母さんはその時自分の心にあった心の叫びを父さんにぶつけたという。



『私は生まれて来なきゃよかった! 小さい頃に傷付けられて憎まれた人間から傷付けられ奪われた体には何もないの! 弱い感情を隠すために人に良い子だと思われるように演じて、善人な行動や頭の良い事や顔が生意気だって言われて、見ず知らずの人間に嫌われて、好きでこんな人生を送りたかった訳じゃないの! 何も知らないくせに、傷付けられた感情は一生心に残るんだよっクソが!! これ以上生きてたって何も良い事なんてない。事件を起こした私が良い事したって評価される訳ない、どうせ憎まれ口しか叩かれない。これ以上生きて幸せになんかなれる訳ないのよ』



そう叫んだ母さんそのままナイフを地面に落として、そのまま座り込み泣き崩れたという。



その時、父さんは母さんの泣き崩れた姿がきれいだと思ったらしく、その姿に母さんを心から守りたいと本気で思ったのだと言っていた。



父さんはずっと母さんを怖いと思っていて、関わりたく無かったと言う。



けど、泣き崩れる母さんはとてもきれいで可哀相で惨めに見えて、この人を置いて言ってしまったらきっと後悔する、こんな所で心を壊させたくないと思ったのだと。



そしてその場で父さんは母さんに『僕は君がずっと怖いと思っていた。だけど、君は怖いくらいにきれいで乙女だ。幸せになれないというのなら、僕が君を守って幸せにさせてあげる。もう二度と誰にも傷付けられないように守ってあげるから』とプロポーズにも取れるような言い方を告げたという。



それに対して母さんは『まるでプロポーズじゃない。あんた大学生でしょ。まだ無理じゃないの。それに私はもう生きる価値なんて残っていないの。心が壊れてるのよ、こんな壊れた人間と生きたってつまらないだけよ』と自分を卑下する言い方をしたのらしいけど、父さんは食い下がる事なく『だったら幸せを見つけに行こうよ。世界は広いんだよ。僕は君を助けたいんだ。心が壊れてて人間として機能していなくたっていい、壊れそうになったらまた手を伸ばすから、君は生きているんだよ。
確かに僕はまだ学生だけど、君が生きて幸せな人生になるんだったら、なんだってするよ。だから、自殺なんて僕が許さないから』と告げたのだと。



父さんはどちらかと内気な性格で、困っている人間を助けたがる人だった。


最初は死んではいけないという感情で助けたのだろう。



だけど、母さんの思いに手差し伸べて特別になりたかったと言っていた。



父さんと似ている部分と言えば、こういう所だと言える。