俺が7歳の頃母親を交通事故で失くして、父さんは俺に接する時は平常に保っていたけど、1人になるといつも泣いていた。



その時の俺はまだ人として子供らしい感情があったのかもしれない。



けど、俺まで悲しんだら父さんまでもが悲しむから悲しまないようにしていた。



けど、父さんには無理しているように見えていたのだろう。



俺の気持ちなど見透かされていた。



そう、幼い頃の俺は素直で純粋で真っ直ぐで子供らしく普通だったんだ。



俺が変になり始めていたのは、おそらく11歳の小5の頃に起きた事が原因だと思う。



俺は昔から頭の回転が速く、すぐに状況を理解する頭脳を持っていて、すぐに気が利く性格でもあった。



学校の成績も教師からの評価も良く、家の家事も出来る限りしていた。



頭の回転の速さも気が利くのも、性格も容姿も全て母親譲りから成り立っているものだった。



うちの母親は顔がすごくかわいく、頭脳明晰で何やっても完璧なそんな人間だった。



周りから称賛されて育ってきた母親は、父さんも俺も自慢な母親だった。



だけど、母親の人生はある意味壮絶で、母親は容姿がかわいくずる賢く頭が良く気が利いた人間だったけど、一部の低能な人間からすれば嫌われている存在だった。



父さんが母さんと知り合ったのは高校生の頃だと聞いている。



母さんの過去を聞いたのは、母さんが生きていた俺がまだ6歳の頃だった。



けど、6歳の頃の聞かされた記憶など理解できるはずもなく、後々に父親からしっかりと聞いた。



母さんは俺によく言っていた言葉がある。



それは今でも頭に残っている。



『優弥、あんたはどんなに心が苦しくても辛くても悲しくても壊れても弱くなっていても、諦めるという感情を持ってはいけないよ? 優弥はとても私とすごく似ているから、私のような感情は持つなとは言えないけど、誰に対しても良い人だと思われなさい』



母親は評価が高い人間だったけど、一部の人間からは酷く嫌われていた。



母親は見た目と違って喧嘩早く人を小馬鹿にする癖があって、とても強く問題起こすそんな人間で怖れるような人だった。



高校生の頃に一部の嫌われていた人間から体をズタズタに傷付けられた事があり、その際に復讐の糧としてやられた相手と加わった人間全員をズタズタに殺す勢いで殴り掛かるという事件起こし警察に捕まった事があった。



その結果、高校退学する羽目となり、すぐに釈放されたものの、母さんは自分で起こした事件や自分の体を傷付けられたトラウマの影響で酷く精神が病んでしまい引きこもりとなってしまった。



せっかく転入した学校でも一度も行く事もなく、家に引きこもり、ただ大人しく引きこもっている訳ではなく、時々奇声を上げたり壁を殴ったりしていたという。



そんな日々が毎日続いて、元々母さんは実の父親から幼い頃は虐待を受けていて、小学校あがる際に離婚し中学の頃に再婚したと言っていた。



そんな母さんの様子を母さんの両親、言わば俺の祖父母は母さんを病院に入院させたのだった。



帰ってきた母さんは元には戻ったものの、以前のような明るい性格にはならなかったという。



人は一度酷く傷付けられると、取り返しのないを感情を生むというものだ。



その頃の父さんは単なるクラスメイトだったという。



そして父さんと母さんが再会したのは、まだ日が上ってまなしのとある山頂だった。



母さんはナイフを片手に山頂を飛び降りる寸前だった。