「はあはあ…はあ」



(気持ち悪い…)



美実さんの記憶の話しをしたから吐きそうだ。



でも、今はバス亭に着くまで我慢しないと。



「優弥くん、待って」



「はあ…天仲さん?」



「バス停まで送るわ」



「えっでも」



「いいから」



「はい…」



そう言って天仲さんは先に歩き出した。



美実さんの話をしたらいつものトラウマの発作がなりそうになったので、途中だったが切りやめて帰る事を伝えた。



美沙樹のお父さんは少し驚いた表情をしていたけど、挨拶をしてすぐに家を出た。



と、思ったら天仲さんが追いかけてきたから驚いた。



送ってもらわなくて結構だったのに、困ったものだ。




「ごめんね」



「えっ」



天仲さんは突然俺に謝りだした。



「桜戸さんは私達の家族の事情を分かっているけど、本当の理由では理解していないの。響ちゃんの事で自分にも危害が加われて直面したはずだけど、あくまでも桜戸さんは家族だけど他所者でしかないの。血が繋がっていない人間が私達家族を理解するのは難しいの。普通の感情を持った人間には。ただ、美実は両親と美実を殺した悪い人という認識なの。だけど、どうしてそういう経緯に至るのかがあの人には分からないんじゃないかな。
普通の事なのよ。ただ家族を守りたい誰れしもが思う感情なの。美実が普通じゃないって事認識してないんじゃないかな? 多分、頭に何か障害がある人間なんじゃないかな?」



この世には理解できる人間と理解できない人間がいる。



だけど、ほとんどの人間が理解できない人間で、俗に言う普通の人間がそういう分類だ。



情報だけを視点で見ても理解できなくて、状況に直面しても頭や体に叩き込まないと、焼きつ事はできない。



理解や直面してもその限りだけで、本当に理解していなきゃ何の意味も持たないんだ。



「優弥くんは…普通ではない人間だね。
私達と同じなんだと思う」



「!」



天仲さんのその言葉に俺はなぜか違和感というものがなかった。



「あなたは痛みがある人なのね。…けど、心が不安定で闇を感じる。それは殺意の感情ではなく、辛いや苦しいって感情。本当はこんな自分は嫌なのにそれができないって所かしら」



「あ、あの」



「ん? ああ、ごめんね」



この人も美沙樹と同じような力を持った人なのだろう。



「あなたも力があるんですか?」



「うん? 私も心原の家族の一員だけど」



美沙樹が言うには、美沙樹のお母さんも力があったと天仲さんが教えてくれたと言っていた。



「あの、聞いていいですか?
心原家って全員が力を持ってるんですか?」



「……」



そう尋ねると、なぜか天仲さんは黙り込み俺の瞳をじっと見つめてくる。



「あの…」



「心原はある意味呪われた家族かもしれないね」



(呪われた家族!?)



天仲さんは落ち着ちつきながら驚愕のひとことを漏らした。



どうしてそんなに冷静に言うのかは、さすがに驚いたけど、でもそう思うしかできない何かがあるからだろうか。