美沙樹と別れて、バス停へと向かっていると、美沙樹が曲がった向こう側から何かの動作が聞こえてきた。



(車?)



パタンっと大きめの車のドアが閉める音が聞こえ。



その数秒後、俺の横を通り過ぎる車が走ってきて何気なく道路の方へと顔を向けると、その車の後方席に歌菜に似た女子が乗っていた。



いや、あれはどう見ても歌菜だった。



(歌菜?)



確信を持ったのは一瞬だけ、俺の方に目を向けてすぐに歌菜だと確信を持ったからだ。



「っ…えっ」



その瞬間、脳裏にある最悪な考えがよぎった。



それは美沙樹が意を持って教えてくれた「狙われている」という情報。



俺は急いで曲がり角の方へと足を駆け出した。



その動作はまるでスローモーションのように時が止まったかのように感じられた。



「…っ!?」



美沙樹の家の道順は2回程訪れているから記憶に入っている。



曲がり角を曲がって真っ直ぐ行った3階立ての赤と黄色の大きい家だから。



だからと言って、こんな数分で帰れる程の距離ではないはずだ。



曲がり角を曲がると歩いている筈の美沙樹の姿はどこにもなかった。



「!」



その代わりに見つけたのが、真ん丸としたうさぎと猫が付いたストラップだった。



「これは…美沙樹の?」



見覚えがある以前にそのストラップは別れる際にも目に入っていた。



更に確信が持てるとしたら それは美沙樹は自分で言っていたからだ。



『美沙樹、そのストラップかわいいね』



『これ?これは、お母さんと杏ちゃんに貰った物なの。うさぎがお母さんで猫が杏ちゃんから。似てるから2つに合わせたんだ』



『へーそうなんだ』



『でも、もうすぐ紐が切れそうだから、カチっとした物に変えようかなって思って』



「ストラップの紐が千切れてる」



さっきの耳に入った動作はもしかして…。



美実さんと架菜に連れ去られて、抵抗した際におそらくストラップが切れたのだんだと思う。