葉月くんの事だから何か策があるのだろうと思う。



今度こそもう一度挨拶をして曲がり角を曲がり、葉月くんと別れて自分の家へと向かう。



「……」



家へと向かっていると、普段停まっている事のない黒い車が道路付近に停まっている事が気になってなんとなく目をむけながら素通りする。



と、その時だった。



「! えっ」



私の目の前に現れたのは、ずっと葉月くんや篠原くんが探し求めていた人だった。



「白石…さん?」



「…ふっ」



白石さんは私を見ては嘲笑うかのように鼻で笑い、私に近付く。



その異様な白石さんのオーラは目に見えるようにドス黒くケダケダしいもののようだ。



近付いて来てるとはいえ、数メートル程離れているので心の声や頭痛はまだ感じないが、目に見える程のケダケダしいオーラは感じる。



普通の人にはおそらく分からないのだろうけど、白石さんのオーラは以前より更に不気味さを感じる。



(そうだ、葉月くんに言わなきゃ)



葉月くんはずっと白石さんを探していたから、この事を伝えなきゃいけない。



その時の私は、いつもの平常心ではなかったと思う。



白石さんの妙な恐怖感に苛まれていたから、とりあえずは戻って葉月くんに伝えなきゃと思った。



そう思い踵を返したその瞬間、バッと近付いた白石さんは私の腕を持った。



「!? っ」



その途端、何かが脳裏が走って、それはいつもの重苦しい心ではなく、何かが迫ってくるような恐怖感と似ていた。



あまりにもいつも感じていた白石さんとは何かが違っていた。



(何これ…知らない)



確かにいつもと違うけど、でも他の人とは明らかに違う黒い何かはあった。



その感覚に困惑して動けなかったんだ。



おそらく、それがいけなかったんだ。



気にしないで葉月くんの所に伝えに行くべきだったと、でも気付いた時には遅かったんだ。



「!? っ…みっ!」



今日こそ帰ったらお父さんとここあさんに絶対に言わなきゃって葉月くんに素直に話せて決心が付いたのに、ようやく不安が取り除けるって思ったのに。



私はいつだって弱くて守られるだけの人間なのだろうか。



お母さんやおばあちゃん達みたいな人生を辿るだけなのだろうか。



何も言えないまま伝えれないま終わってしまうのだろうか……。