俺は美沙樹のお父さんに歌菜の事や美沙樹の事を伝えた。



「そうか…」



「やっぱり思った通りじゃない。美実は絶対に響ちゃんを狙うって…あれだけで終わるはずがない。
そして桜戸さんに行くのね」



「……」



2人は美実さんの事情を知っていて、どうなるかも予想が付いていたんだ。



きっと、響が伝える以前に分かっていた事だったんだ。



「響はその事に気付いていたのだろうか?」



おじさんはなんとなく疑問を口にするが、気付いていたというか話そうとしていたんだ。



美沙樹のお母さんとおばあさんに言われて。



「あの、言えなかったんです。本当は言おうとしてたんです。今日こそ言おうとしていたみたいで、俺に対しても隠そうとしていたぐらいなんですから」



「何を?」



「それってつまり・…響ちゃんは由理ちゃんや叔母さんから聞いたの?」



「!」



その言葉に疑問を持っていたおじさんが確信するような表情になる。



2人の表情からして2人は美沙樹の力については何かは知らないみたいだけど、力があるという事は分かっているようだ。



「はい…そう言ってました」



「そうか、やはりな。君は知っていたのか?」



「まあ、はい」



「けど、予想していた事だとしてもどうしてすぐに言ってくれなかったんだ」



「できなかったんですよ」



美沙樹はずっとお母さんに守られて生きていたから、自分の身に恐怖が起こるなんて思っていなかったのだろう。



恐怖が立て続きに起きて何が正解なのか分からなくなっているのだろう。



だから、伝えようと何度も試みても上手く言葉が出て来なかったのだろう。



俺に対しても同じで迷惑掛けたくないからわざと言おうとせず隠していたのだろう。



本当は助けて欲しかったんだ。



俺に話した後の美沙樹は少し安心していた表情をしていた。



なのに俺は助けたいと思っていても、気付けなかったんだ。