願う先にある想い

女性は天仲ここあさんと言って、美沙樹が言っていた、美沙樹のお母さんの従姉妹の叔母さんだ。



立ち話しもなんだかと言って、美沙樹の家にお邪魔する事になった。



美沙樹の家で彼女に何があったか天仲さんに事情を全て話したのだった。



「美実が誘拐したのね」



「そうなります」



「でも、どうして分かるの？美実の姿は見ていないんでしょ? それに、美実とはどういう関係なの？
あの子が一般のしかも高校生の男の子と知り合いなんて…」



天仲さんが疑問するのも当たり前の事だ。



あの人と関わろうとする人間なんてそうそういるはずもない。



いるとしたらおそらく…普通ではないような人間だろうか？



そういえば、中３の頃何度か家に美実さんを訪ねに黒いスーツにサングラスに派手な髪のした口調が恐ろしく悪い男性が来ていた事がある。



お金を盗むんじゃないかとビクビクしていたけど、泥棒みたいな行為は一切しなかったが、ただ話している内容が恐ろしくおぞましかったのを覚えている。



絶対にあれは普通ではない人間だ。



なぜかそいつが現れるのは父さんがいなく、いつも美実さんと俺の２人でいる時が多かった。



ただでさえ、美実さんと２人きりなど恐怖で押しつぶされそうだと言うのに、更に恐怖が倍増していた。



でも、なぜかそいつは時間を見計らっているのか、父さんが帰ってくる数分前には帰っていき、父さんと直面する事がなく、父さんも知らないままだ。



きっと、あの人は俺に恐怖を心に押し付けようとしていただけなのかもしれない。



「優弥くん？大丈夫？」



「あ、すいません。そうですね、歌菜が俺の元彼女なんですけど、その子と美実さんと一緒にいると思うんです。つまりですね、車を運転していたのは美実さんという事になると思うんですよね」



「TVで言っている共犯の人がいるって言うのって、まさかその子だと言うの？」



「そうです」



「どうしてそう言えるの？」


「歌菜は俺に執着してて、俺を追いかけて来たんです。多分、美沙樹が俺と仲良くしているのだと勘違いして、それで彼女に狂気を向けているんです」



別に俺は美沙樹と特別 仲良くしてるつもりなんてない。



連絡先は知っているけど、ただ、あの子は放って置けなくて手を差し伸べてあげなきゃいけない女の子だから。



ただ、それだけなんだ。



美沙樹に対して特別な感情がある事に気付いているけど、でも俺はこの気持ちをどうにかするつもりなんて更々ない。