「どうしたら…落ち着け…」



予想外の展開にどうしたらいいのか分からず思わずパニックに陥る。



とその時、美沙樹の家の方向から誰かが小走りで近付いてくる。



「あら、あなたその制服…鈴凛学園の制服よね?」



「あ、はい」



「やっぱり!
ねえ、同じ制服の女の子見かけなかった?」



俺に近付いてきた女性はそう言って食い込み気味に尋ねてくる。



「セミロングで後ろでハーフアップのお団子でフリルのシュシュを付けた少し背が低い小柄なふんわりしたかわいい女の子なんだけど、知らない?」



(それって…)



「あら、あなたよく見ると男の子なのに結構かわいらしいお顔なのね。…?あなた…」



「えっと…」



「ああ、ごめんなさい」



そういう反応は昔からの慣れっこだから特には気にしてはいないから別にいいが。



でも初対面の人間から絶対と言う程同じ反応されるから、毎度同じというのも問題ものだ。



「あの、それって美沙樹の事ですよね?
あなたはもしかして美沙樹のお母さんの従姉妹に当たる方ですよね?」



「ええ、知ってるの?」



「はい、美沙樹から聞いていてます」



「そう、それで響ちゃんはどこかな?」



そう言いながら、女性はキョロキョロと辺りを見渡す。



「…あの、その…美沙樹は」



この人の絶望的な反応になる事は当たり前だからって躊躇している場合ではない。



これではまるで、美沙樹が俺に躊躇していたと変わらない。



真実を告げないと、誰が美沙樹を助けるって言うんだ。



俺が居たのに気付かなかったのは俺のせいなんだから。



こんなのまるであの時と母さんや歌菜やあの子の時と同じじゃないか。



母さんの時だってそうだ。



助けられたかもしれなかった。



歌菜を見捨てなければ、ああはなってなかったかもしれない。



あんな思いはもう2度とごめんなんだ。



「美沙樹は…美実さんに誘拐されました」



俺は体を微々に震えながら口をを開き女性に告げた。



「えっ…どういう事?」



女性が動揺しているのが目に見える。



思った通りの反応で普通はそういう反応だ。



「これ…」



手に握っていた美沙樹のキーホルダーを女性に見せる。



「これは…響ちゃんの」



美沙樹のキーホルダーだと理解した途端、女性の動揺していた目が確信を持った瞳へと変わった。



「ねえ、何があったか教えて!」



「あ、はい」



きっとこの人は本当は何かを理解していたんだ。



だから、すぐに理解を求めたんだと思う。