放課後、教科書類を制鞄に入れていると、ふわっと人影が目の前に現れる。



「美沙樹」



「!」



「行ける?」



「あっうん」



葉月くんの表情はどこかぎこちなく、少しだけ私の顔を伺うようだった。



「あれー2人でどこか行くの?」



すると、峰流さんが気になる様子で私と葉月くんに声を掛ける。



「あーうん」



葉月くんはなんとなく気に掛けてほしくなかった表情をする。



「まさかっ放課後デー」



「違うから!」



峰流さんが勘違いの思考に葉月くんは素早く一喝を入れる。



「えっでも…放課後に男女が一緒に帰るなんてデート以外に何があるの?」



「何?その当たり前みたいな言い方は」



「当たり前でしょうが!」



「意味がわからん」




峰流さんは絶対と言って聞こうとしない。



「とにかく、今日はこの子と話があるからそれだけなの」



そう言って、私の肩を軽く押して教室の外に向かわせる。



「えー何を?」



「内緒」



「なんで?」



それでも尚、気になる峰流さんは何度も聞いてくる。



「ほら、行こう」



「う、うん」



「あっちょっと」



峰流さんをのけ剥がすようにして、葉月くんに腕を握られる形で教室を出たのだった。