「……」



「はあ」



「ねえ、前から思ってたんだけど、零って白石の事が好きなの?」



峰流さんは篠原くんの事を見ながら葉月くんに尋ねる。



「うん。俺と付き合う前からね」



だから、あんなにも白石さんに固執した言い方をしてたんだ。



「でも、なんであんな性格 最悪女と付き合ってたの?」



「歌菜は性格が悪いんじゃないんだよ。
あの子はただ素直に俺の事を好きでいたんだよ」



峰流さんの尋ねに葉月くんは静かな声で浮かなく答える。



それは、白石さんの事を思っての想いだと思う。



「……」



それが、なんとなくだけど心にツキっと感じた気がした。



「歌菜がどうしてあの人と行動を共にしているのか分からないけど、でもおそらく何かしようとしているのなら、俺はあの子を止めなきゃいけないんだ。
それが、俺の役目なんだろうな」



「…葉月くん」



そうだった。



葉月くんは白石さんから離れたいと思っていても、いつも白石さんの事を気にしていた。



苛ついてても腹立っていても、いつも白石さんの事を気にしていた。



私はただ被害に遭っただけで、特別だって感じちゃダメなんだ。




「ねえ、優。零と仲直りした?」



「仲直りってケンカでもないだろ」



「そうだけど」



朝の事があってなぜか篠原くんは葉月くんから避けるように見えて、篠原くんはいつも葉月くんと一緒にいるのに今日は居なかった。



昼休みも篠原くんの姿はどこにも居なかった。



葉月くんは気にする事なく、他のクラスメイトの友達とお昼を一緒にしていた。



そんな葉月くんを見て弥佳ちゃんが疑問を口にする。



「あれってやっぱ喧嘩だったのかな?」



「どうだろうね、あの2人ってギクシャクな時ってたいてい白石さんが絡んでるよね」



「…確かに」



最初の時も篠原くんは不機嫌そうな表情が多く、その原因が白石さんだった。



「篠原くんは白石さんが変になってもずっと好きでいたんだ」



「ある意味一途よね」



「でも、葉月くんは嫌になっちゃったんだよね」



「分かんなくないよ。
あんなにしつこいのは、誰だって嫌になるって」



「そうだよね…」



確かに白石さんの葉月くんに対しての愛情は異常に見えた。



白石さんは葉月くんしか見えていなくて、葉月くん以外必要としていないみたいだった。



葉月くんが手に入ればそれでいい。



他の女子なんて必要ない。



他の男子も必要ないと。



自分の都合しか考えていないみたいだった。



何かに支配されているみたいで、相手の考えなんてどうでもよくてまるで心に意思なんてないように見えた。



心に悪魔が棲みついているかのように、悪鬼のような感情だった。



本当の白石さんの心はどんな心なのだろう。



葉月くんなら分かるのかな。



葉月くんなら何か分かるのかもしれない。