結局、昨日は2人に言えなかった。



2人共、夕食を終えた後はすぐに自分の仕事に取り掛かって、声を掛けようとするとすぐに断れてしまった。



「とにかく決心したんだから、言わなきゃ」



そう言って、鞄を手にしドアノブを開ける。



「おはよう、響ちゃん」



「おはようございます」



2階のダイニングに入るとここあさんが挨拶をしてくれて、既に席に付いて朝食を摂っているお父さんも同じく挨拶してくれて、オウム返しのように挨拶をする。



トイレと洗面所から戻ってくると、お父さんは鞄を持って1階へと向かおうとしていた。



「じゃあ、響。
お父さんもう行くな、行ってきます」



「あ」



「行ってらっしゃい」



ここあさんがお父さんに挨拶をした後、私は昨日の事を思い出すかのように脳裏に浮かぶ。



(言わなきゃ言わなきゃ)



「お父さん!」



「ん?」



決意した声でお父さんを呼び止めると、お父さんはぱっと私の方を振り向く。



「どうした?もう行かなきゃならないんだけど」



「あのねっ」



怖がったまま何も言えないなんて、そんなの絶対に後悔するから、ちゃんと伝えなきゃいけないと思う。



「帰ったらでいいの、話があるの。
だから、ここあさん、お父さん聞いてほしいの!」



決意しながら伝えた言葉は少しだけ小刻みに肩を竦ませていた。



私の言葉に反応するかのように、お父さんは微笑みを向けて「ああ、分かった」と言いそのまま1階へと降りて出て行った。



「………」



これでいんだ。



これできっと。



「それで、話ってとても大事な事?」



「あ、はい…」



お父さんが行った後私はテーブルの席に着き、ここあさんが作ってくれた朝食に手を出しながら、先程私が伝えた私の言葉を聞いてくる。