私の問いにここあさんはようやくして答えてくれた。



「殺したのよ、一家を無害な人達をね」



「えっ」



「理由はまだ私も把握してないんだけど、でも、あの子がやったのは事実なの」



「どうして分かるんですか?」



私の尋ねにここあさんは静かな声で応える。



「夢を見たから…それにあの子が濁すように言ってた。それでも、本当かは分からないけど」



それでも美実さんに対して通報しなかったのは、ここあさんの葛藤があったからかもしれない。



「……」



何かを言わなきゃと考え込んでいると、玄関扉がガチャと開かれる。



「あ、なんだ。帰ってるじゃん」



「お父さん、おかえりなさい」



「ただいま」



「ええ」



「全く帰りが遅いって言うから、急いで帰ってきたのに」



確かにお父さん今日はいつもより時間が早めだ。



「だって、心配じゃない。
もし美実がこの子の事を狙うかもしれないし」



「大丈夫だって」



「そうとも限らないじゃない。あの時だって攫われて殺そうとしてたんだって。
確かに殺されたりはしないと思うけど…」



「あの時は、狙ってたのは由理華だろ?響じゃない」



「そうだけど……」



「あの人が狙ってたのは、今も昔も由理華だろ。
響は違うだろ」



「…っ」



お父さんはお母さんの家族と血を繋がってないから、美実さんに対しての危機感というのが理解していないのかもしれない。



私も美実さんに対してあまりよく理解していないから、何とも言えないけど、美実さんに感じる恐怖は底知れないものだとヒシヒシ感じる。



きっとお父さんは、他人事で私を狙って来ないと思っているのだろう。



お父さんのように優しい考えだったらどんなに素敵かと思うけど、現実はそんなに甘いものではないのだろう。



現実に私は美実さんに狙われているのは事実であるから。