「確信があった訳じゃないんだけどね」



「でも、ここあさん。
この前話してくれた時は確信ないって」



「うん、あの時はそう言ったけど、本当はずっと前から知ってたの。ごめんね、嘘付いて」



「どうして?」



なぜそんな嘘を付いたの?



困惑した表情でここあさんに尋ねるが、ここあさんは何も言ってくれようとしない。



「ここあさん?」



そして、しばらく黙り込んだ後、ここあさんは静かな声で言う。



「由理ちゃんが…もう美実を信じなくなってしまったから、誰も信用を持たれなくなった人間は誰が味方になってくれると言うの?」



「……」



それは、世間や自分の葛藤や訴えに近い感情にも見えた。



「私だけでも美実を信じてあげたかったの。
あの子を孤独にしたくなかったの。たとえどんな罪であっても、たとえ無害な人達を傷付けてしまっても、たとえ家族だった人を殺しても」



「ここあさん」



(ああ、そっか)



これは、自分の葛藤なんだ。



美実さんの事は許せないけど、でも、それでも美実さんの事を見失ってしまったら本当に誰も居なくなってしまう。



ここあさんはいつもお母さんの事や美実さんに対して葛藤をし続けていたんだ。



「由理ちゃんは本当は美実の事を奥底の心では信用していたいという想いはあったはず、でも、あなたの事が響ちゃんが美実によって失われると危険を感じて美実をこれ以上信用出来なくなってしまったの。由理ちゃんだって本当はずっとずっと美実を心配してて、ずっとずっと苦しんで葛藤してた事を私は知ってた」



「…美実さんは何をしたんですか?」



ここあさんの美実さんの想いに私は問いてしまう。



私はあの人がした事をちゃんと知りたいと思った。



そして、私はこの時ある決心が付いた。



ここあさんにお母さんの家族を聞いた時、おばあちゃんから私が狙われていると聞いた時、ここあさんやお父さんに言わなければいけないと思った時、そして、葉月くんにこれ以上迷惑掛けたくないと隠した時、全部全部不安で怖かった。



早く教えないといけないのに、恐怖がそこまで近付いて身の危険に襲われても、どこか曖昧でまるで夢の世界の事みたいに現実味がなく把握出来なかった。



これが現実だと言われても現実だと思えなくて、夢を見ているんじゃないかと、錯覚を起こしているんだと。



そう思うしか信じられずにいた。