願う先にある想い

「君のお母さんって不思議な人だよね、本当。君の事に対しては異常な過保護だけど、こんな俺の事までも気にしてくれるなんてね」



「………」



葉月くんはそう言って、少し悲しそうな微笑みを私に向けた。



「葉月くん…」



そっか葉月くんは自分が嫌いで、でもそれを我慢して、それでも完璧に居ようとしていたかったんだ。



ずっと虚勢を張っていたんだ。



私は美実さんと何があったかは知らないけど、おそらく酷い事が遭ったに違いないと言える。



私はその時、彼に何があったのか知りたいと思ってしまった。



きっと、白石さんの事も何かあったか教えてくれたけど、本当の意味では何も理解できていないんだと思う。



「ねえ、葉月くん。美実さんと何があったの?」



「……」



その問いに葉月くんは一瞬ピクっと肩を竦ませ、何の感情を示さない氷のような瞳になる。



「はづ…」



「ごめんね、今はまだ教えられないんだ」



「!」



「ごめんね…」



葉月くんにとって美実さんの存在は、葉月くんの心に大きく重いものとなってのし付けられたんだ。



(!)



ふいに思った。



もしかしたら、お母さんは葉月くんから何かあったか聞いたのかもしれない。



そういえば、お母さん言ってた。



『ねえ、響。彼、葉月くんの気持ちをちゃんと受け止めてあげた方がいいよ』って前日言っていた。



お母さんが美実さんから受けた感情は計り知れないもので、それを葉月くんの心に共感したのかもしれない。



(だからなの?)



だからお母さんは葉月くんを許せたのだろうか?



ううん、それだけじゃなくて…私の事まで彼の心から理解していたと言うのだろうか。



(なんでお母さん…)



そんな事を葉月くんに、葉月くんもなんで…なんで。



お母さんはずっと私を心配してて、葉月くんも同じように気に掛けてくれていた。



その事が少し悲しくなった。



私は怖がりで何も出来なくて弱虫な人間だから、無関係な葉月くんをこれ以上巻き込みたくなかった。



でも、葉月くんは最初から無関係じゃなかったんだ。



だからお母さんは、葉月くんを知った時に何か察していたのだろうか。



そんな葉月くんだから私の事をお願いしたのかな。