願う先にある想い

「俺はね、その時思ったんだ」



葉月くんは浮かない表情で言葉を告げる。



「゛どうしてなの?゛って。だって俺は誰かを守れる程大切何かを持っていないから」



その言葉は私が予想していたものとは以外なものだった。



「俺はいつも感情に我慢していて本当の感情なんて持たないようにしていたから」



「感情?」



「美実さんにいつも言われてた。『母親が亡くなったのお前のせい』だと、痛みつけるように戒めるようにいつもいつも脅すように言われ続けていた。でも父さんから絶対に違うと言うけど、実質には俺のせいだったのかもしれない」



「どうして?」



「俺がわがままを言ったから、母さんは事故に遭ったから。実質違っても結局はそういうものなんだよ」



「……」



なんだろう、この既視感。



葉月くんの言葉になんとなくお母さんに対して似たような感覚を感じた。



(何これ……)



「だから、違和感があったんだ。何も持たない俺にどうしてそんな事を言うのだろうかって。それに、俺と美沙樹はクラスメイトだけで友達という関係程に親しいという訳でもないのにね」



「…………」



確かにその通りである。



葉月くんと私の関係はただのクラスメイトで、連絡先は知っているけど話は少しする程度だけど、友達という関係性ではない。



(じゃあ、いったいなんだろう。
私と葉月くんの関係って)



「でもね、美沙樹のお母さんは俺に言ったんだ。『何もなくないと思うよ。だって、あなたは響にとって特別な子なんだからって』そう確信するかのように言ったんだ。ねえ、美沙樹は俺を特別だと思ってるの?」



「えっ? …特別?」



そんな事を真剣な瞳で聞かれても、どう答えたらいいのか分からない。



確かに多少特別な男の子という認識はあるけど、それは心の声や感覚が聞こえないからで、その他は…。



「よ、よく分からない…。けど、葉月くんはそうなの?」



「……多分、あながち間違っていないと思う」



「!」



また予想外の一言が返ってきた。



「俺ね、最初から美沙樹のお母さんが羨ましいと思ったんじゃなくて、俺に対して頼ってきた事がその不明等な優しさや理解された感覚をもたらしてくれる事が羨ましいって思ったんだ」



「……」



「だって、そうでしょ。俺はいつも母さんがいないとだめだと思われたくなくて、何に対しても完璧で居たかった。父さんにとって自慢の子供で居たかった。
だけど、美実さんはその自身さえもすべて否定して、歌菜によって何かが壊れるかのように感じていたのに、美沙樹のお母さんはこんな俺に手を差し伸べるかのように与えてくるなんて変でしょ」



(ああ、そっか)



葉月くんの気遣いや完璧なのは、自分がおかしい事を隠す為の防御だったんだ。



誰かに手を差し伸べたり助けたりするのも、全部全部自分の制御掛ける為の行いだったんだ。



葉月くんは不完成な人間だったんだ。