願う先にある想い

「…やっぱり難しい?」



「あ、えっと…」



中々言おうとしない私に不安そうに私の顔を伺う。



「まあ、そうだよね。言えって言って、いきなりすぐ言えるようなものじゃないよな。分かるよ、俺も気持ちをすぐに変えれる程器用な人間じゃないから」



「……」



「器用だったら、美実さんの事も歌菜の事も上手く対処出来たと思うんだよな。それができないから、色々な壁が出来たんだと思う」



「壁…」



(そっか、そうだよね……)



葉月くんは器用に見えたり気遣いが出来たりするけど、それは単に見た目や行動での判断で、彼の心は不安や悩みが抱えらているのだろう。



心の声や感覚が見えないのは、その思いからなんだろうか?



「俺さ、少し羨ましかったんだ」



「えっ」



ふいに葉月くんは儚げな瞳でポツリと漏らす。



「前に言ったと思うけど、俺は母親を7歳の頃に交通事故で亡くなっているって言ったでしょ」



「う、うん」


1年の頃の文化祭期間の際にその事は聞いた。



「いつもは他人の母親が羨ましいって思った事はあまりなくて、幼い頃は思ったりした事あっても、成長する過程で思わないようになってたんだ。それが普通だったから」



「………」



「でも、美沙樹のお母さんと知り合って、最初はそんな風に感じてなかったんだけど、あの日、君のお母さんが殺される3日程前に言われた事がすごく胸に突き刺さるんだ」



「3日程前?」



3日程前、確かに葉月くんは病院に来てくれて、私はお母さんに促されて先に帰らされたんだった。



葉月くんはお母さんからある事をお願いされたという。



それが「私を守ってほしい」との事だった。



「お母さんが、葉月くんに?」



「うん」



「なんで?」



なぜお母さんが葉月くんにそんな事をお願いしたのか、その時はまだよく分からずいにいた。



「美沙樹は『弱くて何もできない子で怖がりだから、誰かに守ってあげないとダメだからって』」



「どうして?」



「それは俺はよく分からないけど、でももし何か理由があるとしたら、お母さんは美沙樹が心配なんだろう」



「……」



それは私もよく理解しているつもりだ。



なぜならお母さんは、いつも私を心配ばかりしていた。



当たり前の事だ。



お母さんが亡くなるあの日、私を残してしまう事をとても後悔したような言葉を発していた。



自分の運命がこうなる事だと理解していても、やはり私の事を一番に考えていたから。