バス停へとやってきて、篠原くんがバス時刻を確認している。



「ああ、もうすぐ来るな。……なんか空気重い」



篠原くんが言った通り空気が重いのは先程からずっと続いている。



そのせいなのか、葉月くんはさっきから無言で不機嫌そうな表情をしている。



「なあ、優弥…何怒ってんの?」



「別に…」



「葉月くん……」



葉月くんの考えている事はだいたい理由は理解しているつもりだ。



だったら、思っている事を言って欲しいと思った。



ただ、私は葉月くんを思っての事だった。



「だったら」



「!」



葉月くんは私の手首を掴み、彼から向けられるぱっちりなエメラルドグリーンの瞳が少しだけキリッと強くなる。



「なんで、何も言ってくれないの?」



「えっ」



「俺、狙われてるなんて聞いてないよ。昼間言ったよね何度も「何かあった?」って、でも「なにもない」って言って俺から逃げたよね? でも、さっきあったよね? 何もなかった訳ないじゃん。どうして隠すの?」



隠していた訳ではない。



ただ、最初から葉月くんには今回の事は言うつもりはなかっただけだ。



「……隠してなんかない」



「は?」



「言いたくないだけだもん」



知られたくない。



これ以上もう迷惑なんか掛けたくない。



お願いだから、詮索しないでほしい。