「だって…迷惑掛かるから…」



「は?」



本当は葉月くんに私の気持ちなんて言いたくなかった、気付かれないままで居たかった。



でも、彼は最初からいつも私を気に掛けられていたから、だったらせめて今回だけは気に掛けないようにしようと思ったのに、結局無駄だったのだろうか。



「だって、いつも迷惑ばかり掛けてばかりで嫌だったんだもん」



「えっ」



顔を俯きさせ下唇を微かに震えると同時に、気持ちが熱くなるのを感じる。



「白石さんの時だって、お母さんの時だって、いつもいつも迷惑ばかり掛けて、私は何も出来ていないんだもん。だから、今回は葉月くんには言わないようにしようって思ったの。…だからこれ以上、葉月くんに迷惑掛けたくないから言いたくない。それに、お母さんがこうなる事を知ってたのに防げれなかった…」



「……」



私の言葉を聞いた途端、葉月くんは優しそうに私を見ていた表情が一変として難しい表情と変化する。



そして、次第に私の右手首を掴んでいる手がだんだん強くなるのを感じた。



「…っ」



握り締めたまま葉月くんは私に訴えるように放ってきた。



「何が迷惑掛かるだよ…。そんなのとっくに掛かってるよ。美沙樹が心配だからわざと側にいてるんだってなんで分かんないの!俺は美沙樹が危険な目に遭っているのに、何も知らないままいる方がよっぽど悲しくて悔しくて惨めでしょうがないよ…。俺はそんなに頼りない? そんなに嫌?俺を見くびるのも大概にしろよ!
俺は美沙樹が思ってるより、色んな事に我慢して来てるんだから、そんな事くらいで今更「迷惑掛かる」とか気を遣われてもちっとも嬉しくないんだよ!」



「…っ」



葉月くんの放たれる言葉が一つ一つが胸に突き刺さって苦しく感じる。



「…優弥」



と、スマホをいじりながら終わるのを待っていた篠原くんが、ぴたっと指を止め神妙な表情で葉月くんの方へと目を向けた。



どうして、こんなにも私の事を想ってくれるのか分からない。



分からないけど、けど、葉月くんの必死の想いに涙が出そうなくらいに瞼が熱くなる。



それでも私は…私は…。



「ねえ、言って…俺に教えて。あの時みたいに、教えてよ」



葉月くんは顔を俯かせ、掠れた声で懇願する彼の声はなんとなく泣いているように聞こえた。



(だめだよ…嫌だよ…無理だよ)



どんなに突き刺さる必死な想いでも、葉月くんを傷付けてしまう可能性だってあるかもしれない。



だから、こればかりは教えられない…。



「ごめん…なさい…できない…です」



迷惑は掛けたくない。



もう、これ以上私に関わってほしくない。



ただ、それだけの想いだから…。