「俺さ、結構腹立ってるって知ってる?君が何も言ってくれない事に。狙われてるってどういう事?分かってるのになんで何も言わないの?」



「………」



言わないんじゃなくて、知ってほしくないだけ。



私は葉月くんの訴えに何も言う事なく目を逸らして無言を続ける。



目の前で葉月くんが私を見つめてくるから、私は彼の目を見る事が出来ず逸したままでいる。



「美沙樹こっち向いて」



「……」



葉月くんの綺麗な顔を見つめるなんて、ドキドキしすぎて頭がおかしそうになる。



今でさえもどうしたらいいのか分からないのに。



「はあ、じゃあ離してあげるからこっち向いて」



おそらくこの言葉は私を葉月くんの顔を見させる為の作戦だろうけど、私からすれば離してくれるというだけで素直に反応したのだった。



「本当に?」



「あ、やっとこっち向いた♪」



その言葉に私は理解してしまった。



この言葉は私をこっちを向ける為の作戦だったんだ。



「騙したの?」



「だって、そうもしないと美沙樹こっち見ないじゃん」



「だからって…」



(やばい、やばい…葉月くんの綺麗な顔が目の前にいてどうしたらいいのか分からないっ)



「ねえ、聞いていい?なんで逃げるの?」



「……」



今度はきつい言い方ではなくいつもの優しい言い方で尋ねてきてくれる。



けど私はまた無言でだんまりとなる。



「別にだんまりで良いけど、もう少しで昼休み終わるよ?それに何も言わないとずっとこのままだけどいいの?」



「っ」



それはとても困る。



授業もあるから遅れる訳にはいかない。



葉月くんの言い方は殆ど脅しで、だけど今後の予定を考えると葉月くん達まで遅刻してしまう。



だから仕方なく、黙り込んでいた重い口を開けた。