「………」



葉月くんは一緒にバスに乗る事なく、そのまま篠原くんと駅の方へと向かっていった。



彼の行動に私は少しばかりほっとしていた。



このまま一緒にバスに乗ったら、葉月くんは追求してきそうだったから。



(どうして、葉月くんはああも気に掛けてくるの?)



最初から葉月くんの私に対する行動は不思議だった。



私自身、葉月くんに対して心の声が聞こえない事に違和感はあったものの、どうして近付いて来るようになったのだろうか?



「私は葉月くんの事をどう思っているのかな」



(友達? ううん、違う。仲がいいクラスメイト、なのかな?)



明日、顔を合わせそうにない。




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【コンコン】



「響ちゃん?ご飯出来たよ」



その夜、ここあさんが夕飯の準備が出来たと呼びに来た。



「あ、はい。今行きます」



私は急いでドアを開けて、ここあさんと2階のダイニングへと降りた。




˚˙༓࿇˚˙༓࿇˚˙༓࿇˚˙༓࿇
˚˙༓࿇˚˙༓࿇



「…はあ」



また、言えなかった。



夕飯中、何度もここあさんとお父さんに美実さんに狙われている事を告げようと試みたけど、結局何も告げる事が出来なかった。



「どうしよう…」



今日の事で美実さんに狙われている事に確信してこのままだと本当にまずい事になる、とそう思ったのに何も言えなかった。



(どうしよう)



こんな時、お母さんがいたら何でも言えるのだけど、もうお母さんはどこ探してもいないからお父さんでさえも相談しにくい。



そういえば、私はいつもお父さんではなくお母さんしか相談した事がなかった。



本当、私ってお母さんがいないと何も出来ないんだ。



「自分が嫌になってくる」



昨日から自分の意気地なしさに、少し苛立ちを感じてばかりだった。