「なあ、優弥」



「ん?」



「なんで、そこまであの子の事を気にするの?」



零詞は何に気に食わないのか、不思議そうに聞いてきた。



「…なんでって、気になるから以外に何がある?」



「……気になる、かぁ」



「何?」



「いや、ただ歌菜ちゃんには同じように気にしてあげないんだなって思って」



「……」



零詞が何を言いたいのかは、おおよそ把握しているが、俺にはもうその気などさらさらない。



「あのさ、零詞…。お前がどんなに俺を歌菜の方へ向けさせようとしても俺は好きになる事はもう二度とないから」



「けど歌菜ちゃんはお前しか」



「零詞…歌菜はそうかもしれない、でも俺はあいつの期待には答えれない。俺はあいつの運命の人間にはなれない」



零詞は歌菜に対して思う感情があるから、別れた時も逃げたいと思った時もいつも「考え直した方がいい」と言っていたけど、俺はその頃には歌菜への好きという感情は消えていたんだ。



だから、何度言われようが俺は歌菜とやり直すつもりはない。



「じゃあ、美沙樹が運命の相手だったらいいの?」



「運命の相手かあ…」



正直、運命の相手とかそういうものにはピンとくるものがなかった。



「違うんだ?」



「どうだろう…。
そもそもそういうものにピンと来ない」



「ふーんじゃあお前は、美沙樹が好きという訳じゃないんだ」



「…どうだろう…曖昧と言ったら嘘になるけど、けど感情がない訳でもない。気になるって言っても、心配というかほっとけないみたいなものだし」



「ほんとう曖昧だな」



「うん、でも確実に好きという感情がない訳でもないと言えるんだ」



「いや、それも曖昧だろ」



「そうなんだけど、けど、あるんだよ、感情が。
少しばかり」



「……」



俺の曖昧な美沙樹への感情に零詩は少し呆れた様子なのか、納得いかない表情を見せる。



「なんだよ、それ」



「……」



「だったら、歌菜ちゃんはどうなるんだよ」



「歌菜は…」



歌菜の事は正直歪に感じる時がある。



美沙樹の事を多少なりとも自覚した時、「ああ、やっぱりそうなんだ」と納得してしまったんだ。



もしかすると、俺は最初から心のどこかでなんらかの気持ちを持っていたのかもしれない。



だからこそ、美沙樹が辛そうにしているのにも関わらず彼女は何も言ってくれない事がたまらなく苛つく。



「もっと頼って欲しい」「もっと俺に話してほしい」「もっと俺に近付いてほしい」とそんな欲望ばかり出てくる。



正直、美沙樹との関係性を聞かれると、何と答えたらいいのかわからない。



クラスメイトだけど普通のクラスメイトではなくて、友達とも言い切れなくて、仲がいいクラスメイトと言うべきなのだろうか?



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