「……っ…」



(言わないと、言わなきゃ…じゃないと私)



おばあちゃんに会った事、私が美実さんに狙われている事、言わないとお母さんと同じようになってしまう。



美実さんの暴走を私が、お母さんの娘である私が止めないといけないのは理解しているけど。



けど、私が美実さんの心に響かせる事など本当に出来るのだろうか。



(自信ない…)



悶々と悩み考えていると、キキッと車が停止する音が聞こえた。



「!」



どうやら、考えているうちに家に着いたようだ。



車から降りると同時に、車の音に気付いたのかお父さんが玄関の扉から出てくる。



「ここあちゃん」



「あら、桜戸さん」



「ごめんね、送って貰って」



「ううん、気にしないで。
ねえ、車しばらく停めさせて貰っても大丈夫?」



「ああ、大丈夫。うちは2車までなら置けるから。ちょっと待って、置けるようにするから」



「うん、ありがとう」



ここあさんの車を家の駐車場のお父さんの車の隣に停めさて貰い、助手席から大きな鞄とショルダーバッグを取り出す。



「?」



そういえば、なんで大きな鞄を持っていたのか不思議だったけど、帰りにどこか寄るのかと思っていた程度だったから気にはしなかった。



「あの、ここあさん?」



「うん?」



「もしかして、泊まって行くんですか?」



「うん!」



「えっ言わなかったの? ここあちゃん」



「ええ、驚かそうと思って♪」



ここあさんは子供のイタズラに成功したかのような表情で嬉しそうにクスクスと笑う。



「相変わらずだね、ここあちゃんは」



「あ、でも、東京の方で仕事があるのは事実よ。新しい小説出るからサイン会が東京に行われるから、ついでにね」



「どのくらいいるつもりなんだ?」



「分からないけど、しばらくは居ようかなって」



そう言うと、私の方へと目線を向けてきた。



「…そうか」



ここあさんの目線に察したのかお父さんはすんなりと理解し、玄関の扉を開けた。