願う先にある想い

「おはようー」



まだ眠ぼけた様子の顔でリビングへと降りてくると、既に起きているお父さんとここあさんが挨拶してくれる。



「おはよう響ちゃん「響」」



「………」



2人の姿にまた同じような錯覚を起こしてしまう。



「どうかした?」



「ううん、なんかお母さんがいるかと勘違いしちゃった。ごめんなさい」



「…!」



私は慌てるように洗面所へと向かった。



私の言った言葉にここあさんとお父さんの浮かない表情をしたけど気にはしなかった。



おそらく、お母さんとここあさんはいとこで血が繋がっていて、お母さんとそこはかとなく似ている部分があるから錯覚を起こしてしまうのだろう。



「はあ、歯洗おう」



浮かない気持ちで自分の歯ブラシに手を伸ばした。



「よしと」



いつものハーフアップお団子にフリルのシュシュを付けたヘアスタイルにして、洗面所を出た。



ダイニングに戻ってくると、お父さんは既に席を立って手には鞄を持っていた。



「それじゃあ、もう行くな」



「うん、行ってらっしゃい」



「それじゃあ、あとはよろしくお願いします」



「うん、任せて♪」



ここあさんはニコニコした笑顔で手を振った後、お父さんは洗面所に向かったあと家を出た。



「本当、良いお父さんよね」



「えっ」



ここあさんは朝食を私の前に置きながら微笑む。



「優しくてかっこよくて。
お父さんも響ちゃんが心配なのね」



「そう、なのかな?」



お父さんが優しくてかっこいいっていうのは賛同できるけど、いつもお母さんに対して心配している感じはあった。



お母さんの私に対して過保護過ぎる態度の方が印象で、お父さんはいつも見守っている感じだった。



(でも、まあ)



お父さんはよく「響はいつも変わらないでほしい」って言っていたけど、そういう事なのだろう。



「はい、響ちゃん」



いつもの学校へ行く時間になり、自分の部屋から鞄を持って階段を降りるとここあさんがある物を渡してくれた。



「お弁当?」



「うん、由理ちゃんが亡くなってからはおばあちゃんに作って貰ってたんでしょ? だからこの家にいる間は私が作ろうと思って」



「そうなんですね」



いつもならおばあちゃん居るのに居ないのは何故だろうと思ってて、お昼どうしようかと考えていたけど作ってくれていたんだ。



「ありがとうございます」



「いいえ」



すると、ここあさんは少しうっとりした表情で溜息を付く。



「どうかしました?」



「ううん、ただ…子供が居たらこんな感じなのかなって。うちは子供いないから嬉しくって」



「そうなんですね。その内、できるといいですね」



「うんそうね…でも私は」



私は無難な言葉を掛けたけど、ここあさんなぜか表情が浮かない顔になった。



どうして浮かない表情になったのかすぐに理解してしまった。



おそらく、お母さんの事だと思う。