「それは、私にも視えてたんですか?」



もし視えていたのなら、私はどんな風な感情が視えていたのだろうか。



「あーうーん」



「?」



ここあさんはなぜか曖昧な反応を示す。



「いや、響ちゃんは視えないって言ってたかな」



「えっ」



「よく分からないけど、視える人と視えない人がいるらしくて、響ちゃんは視えない人なんだって」



(私は視えない…?)



「何か違いがあるんですか?」



「さあ、よく分からないけど。あ、でもそういえば…。確か、心に大きな不安や問題を持っている人は視えないって言ってたわ」



「不安…」



その言葉に私は否定もする余地も何もなかった。



なぜなら、私の中には大きな不安や問題があるからだ。



「ここあさんは視えてたんですか?」



「そうだね、いつも楽しそうな感情を持ってるって言ってたわ。でも時々ぼやはかかってるらしいけどね」



(ぼや)



ここあさんは運転しながら、お母さんとの思い出を懐かしむかのように目を細める。



「でもね、ぼやはかかってるけど私や私の家族は視えても自分の家族は視えないって言ってたわ」



「えっ」



ここあさんのトーンがうっすらと低くなったのに気付く。



「おそらく、響ちゃんと同じようにおばさんやおじさんも、そして美実も何か大きな不安や悩みを抱えていたのね。理由は他にもあるんだけど…」



美実さんも同じようにずっと何かを抱え続けているから、視えないんだ。



ただ美実さんの場合は、誰一人として理解してくれる人がいないけど、お母さんは心のどこかで美実さんは想っていたのに、その想いに美実さんには何一つ届いていなかったんだ。



だから、こんな目になってしまったんだ。



何が間違っていたのか何をどうすればいいのか、私は分からない。



「他の理由って…」



「うーん、今はちょっと言えないかな」



「えっ」



「また今度ね」



「あ、はい…」



今は言えないんだ。



おばあちゃんもここあさんも濁すような感じだ。