それから、特に何かが起きる事なく11月の文化祭が終え1週間が経った頃。



「響、ビックニュースだよ!」



その朝もいつものように教室で好きな雑誌を読んでチャイムが鳴るのを待っていたら、玲杏ちゃんが以前葉月くんの時のような感じで嬉しそうに私に近付いてきた。



《転校生!》



(また?)



玲杏ちゃんから聞こえてきた心の声に思わず突っ込んでしまう。



「杏ちゃん、おはよう。また転校生?」



「おはよう! そう、よく分かったね!
そう、転校生。しかも、また男子!」



「へ、へえ。また、男子なんだ」



こんな続けてくるなんてすごいけど。



「今度もイケメンかな。今回はかっこいい感じがいいなあ」



今回も玲杏ちゃんはいつも通りに舞い上がっている。



おそらく、クラスの女子達も例外のように舞い上がっているだろう。




どうやらその転校生は葉月くんと同じ地域から来た男の子のようだ。



眼鏡を掛けた頭良さげなインテリな感じだけど、すごい顔の整ったかっこいい男の子だった。



葉月くんとはまた違ったタイプの男の子だ。



ふと葉月くんの方を見てみると、とても驚いた顔をしていた。



(?)



もしかして、知り合いなのかもしれない。



ホームルームが終わった後、葉月くんはすぐさま彼の席へ行き問いかけて行った。



やはり知り合いだったんだ。



彼の方を見ていたら、いつの間にか来ていたのか玲杏ちゃんがちょっとだけ嬉しそうな表情をしていた。



「インテリでかっこいい感じだね」



「あ、うん」



《でも、残念》



(また残念なんだ)



「あんまりなの?」



「えっあ…うん。メガネ系って好きじゃなくて」



「そっか」



(杏ちゃんの理想ってどんな感じの男の子なんだろう、ちょっと気になる)




転校生の彼の名前は篠原 零詞〈しのはら れいじ〉くんと言って、まさかとは思っていたが彼とは友達だった。



これって偶然だろうか?



それとも、追いかけてきたとか?



それはさすがに考え過ぎか。



おそらく親の都合か何かだろう。