願う先にある想い

「どうしたら、お母さんは現れてくれるの?
傍にはいるんだよね?」



《そうね、いるわ》



「そっか」



お母さんは亡くなったけど、ちゃんと傍にいて見てくれているんだ。



でも、どうしたら現れてくれるんだろうか?



一体何をしたら……。



このままでは現れないとおばあちゃんは言っていたけど、私が何かをしないといけないって事になるんだろうけど。



(でも、何を…?)



《理由は簡単よ》



「!」



どうしたらいいのかわからず悶々と考え込んでいたら、おばあちゃんが静かな声で言う。



《美実を説得して伝えてほしいの。私やお父さんや由理香の心の想いを》



「えっ」



おばあちゃんは想い馳せるような口調で美実さんとお母さんについて話す。



《私は本当に酷い母親だったのかもしれない。
親としても失格で最低な人間だったのかもね。由理香と比べていつも劣っていたあの子が嫌で嫌いで、だからいつも虐待のような仕打ちをしていた。
でも、由理華も同じようにしていたのは事実で、いつも見ぬふりを繰り返し挙句の果てには、この家から逃げたの。でも、本当は心のどこかでなんとかしなきゃいけない、このままではいけない、と思い続けていたのよ。せっかくあの子がチャンスをくれたのに、何も変わらず更に美実を爆発させてしまったのね。
その結果がこの状態をうませてしまったの、この悲劇を》



「おばあちゃん⋯」



《私はこれ以上悲劇をあの子の手で起こさせたくないの。これは、母親としての最後のけじめなの。
こうなってしまったのは、私達のせい。私があの子を突き放し貶し嫌味嫌い続けてしまったから、だから誤った感情を持ってしまった事をすごく後悔してるの。
このまま行くと更に取り返しの付かない事がしてしまう気がするかもしれない》



(取り返しの付かない事?)



それって、お母さんを殺してしまった以上に酷い事をしてしまうのだろうか。



美実さんは何をしようとしているのだろう。



疑問を思いつつ考えを募らせていると、おばあちゃんが低い声で呟く。



『それはね、あなたよ。響ちゃん』



「えっ…」



(私…?)



《由理華が恐れている事はあなた、響ちゃん。
由理華はずっとあなたがさらわれた時からあの子は響ちゃんを守ることが必死で、毎日、響ちゃんのいつもの笑顔で「おはよう」って元気で挨拶してくれると心から嬉しくて今日も大丈夫だって心に言い聞かせているんだって、呟いているのをいつも聞いていたわ。あの子には私が与えれなかった家族の愛情を持てた事がなにより嬉しくて幸せでいることが大事だったの。だから、これ以上もうあの子が悲しむ表情なんて見たくないの。
由理華はあなたが危険な目に遭う事や怖い思いをさせたくなくて、ただ幸せに穏やかな日々を過ごしてくれるだけでいい、そのためだけに過保護に響ちゃんを箱庭のような育て方をしてしまったけど、全ては響ちゃんを守る為でそれ以上もそれ以下もないの。あの子はただ、幸せになりたかっただけなのかもしれないわね』



(幸せ…?)



お母さんは幸せじゃなかったの?



美実さんの存在に恐れて幸せになれずにいたのだろうか。



ずっと苦しみ続けたというのだろうか。



「お、お母さんは幸せだったと思う!
だってお母さんいつも嬉しそうに楽しそうに笑うもん。幸せじゃない訳ないよっ
確かにお母さんはおばあちゃんや美実さんのことを一度たりとも話してくれたことなかったけど、私はきっと言えないことなんだって思ってあえて聞いたりはしなかった。きっとお母さんに聞いてしまったら不幸になって幸せじゃなくなってしまう、それなら幸せな方へ聞かない方がずっといい」



《響ちゃん…》