由理ちゃんは、決してこの事について響ちゃんに知って欲しくないと言って私にも会いに来ないでほしいと言った。



私は最初『なんで?』と思ったけど、由理ちゃんの幸せな生活を壊さないようにするには、私の事も美実の事も心原家の事も知るべきじゃないと理解した。



響ちゃんにこんな事情がある事など知るべきではないのだろう。



だから、会いに行くことは決してしなかった。



由理ちゃんは美実の刑罰以降一度だけ面会しただけで、それ以降は会いに行くことはなかった。



私の所には頻繁に会いに来てくれたけど、決して自分からは行こうとはしなかった。



その方がいいのかもしれないと思った。



由理ちゃんは美実に会わない方がいいのかもしれないと。



それから何年も穏やかな生活が続いていき、美実の懲役は終了し釈放された時も由理ちゃんは来る事はなかった。



私は一応、彼女を迎えてあげた。



美実とは3ヶ月か4ヶ月に何度かは会いに行っていて、できるだけ由理ちゃんの事は話さなかった。



また刑務所の人が言うには、美実はすごく真面目だったという。



子供の頃の美実は不真面目だったというのに、真面目だったという事に驚きだった。



美実はしばらくうちに居たけど、数ヶ月にはまたどこかへと居なくなっていた。



きっと仕事を見つけ出て行って、これからはまともな生活を送っていくのだろう。



もう美実の事を信じなくなってしまった由理ちゃんの代わりに、私が美実を信じてあげよう、そう思ったんだ。



だけど、この時まだ本当の意味で美実と由理ちゃの間にある深い溝は一切消えてない事に気付いていなかった。



それは、あまりにも残酷で深くて消えない、まるで呪いのような深まりだった。



そう、まるで心原の血のような。



ずっと心原の血に悩まされ苦しんで、どうしようもない呪いだ。



誰も開放できない。



誰もどうする事もできない。