捕まった美実は、裁判でははまるで受け入れるかのようにおとなしかった。
由理ちゃんは証人の際に立って全てを話した。
もちろん刑罰は楽なものではなかったが、でも家庭環境や由理ちゃんの比較や劣等感などの全ての事情を見た点で、普通の殺人の懲役よりはやや少なめの年数だった。
ただ、1つ気がかりがあるのは、警察に捕まって連れて行かれる際に言っていた言葉。
『どうせあんただってあの人達と同じ運命を辿るんだから。あたしもここあもみんなね。それに不幸な事になるんだから、あんたはいずれ。長生きだってできない、あんたの娘だっていずれね』
その言葉の意味に由理ちゃんは『わかってるわよ、そんな事』とぼそっと呟いた。
それから何日か経った後、私と由理ちゃんはご両親のお墓参りに来ていた。
『ごめんね、お母さんお父さん。ごめんね』
『由理ちゃん』
由理ちゃんはお葬式に一度だけ来てから一度もお参りに訪れていなかった。
きっと、由理ちゃんは今でも気持ちの整理は付いていないのだろう。
美実が捕まった時も、警察から事情を尋ねた時も、美実と面談した時も、裁判で美実と顔を合わせた時も、刑罰が決まった時も、由理ちゃんは一度も美実に対して以前のような心配するような目で見る事はなかった。
由理ちゃんまでもが別人になったような感じだった。
その後、由理ちゃんは自分の家へと戻っていって、暫くして由理ちゃんが訪れた。
『ねえ、由理ちゃん、今日は』
『あのさ』
『ん?』
『私さ、引っ越そうと思うの』
『えっ』
それは、あまりにも唐突だった。
『どこに?』
『東京』
『それって』
私は引っ越しと聞いて、ある考えが脳裏をよぎった。
もしかすれば、由理ちゃんは美実から。
『桜戸さんがね、転勤する事になったの』
『ああ、そっか』
私が単なる早とちりしすぎだったのかもしれない。
ほっとしたのも束の間、私が思っていた考えが、由理ちゃんの口から出てしまう。
『でも、いい機会よね』
『えっ』
『あの人が居ない場所に行けるなら』
『由理ちゃん』
『逃げたと思われてもそれでもいい、でももうあの人と一緒にいた場所には居たくないの。
私、美実の事もう何も信じられない。私、何の為に美実を信じてたんだろう。美実はきっと戻ってくれるとそう思ってたから、だから信じてたんだと思う。でも、あの子は変わってしまったのね、まるで殺人鬼のようにね。それに無理よね、分かっていたから…こうなるって。どんなに抗っても運命に逆らえないんだから』
その時の由理ちゃんの表情は、悔しそうな辛い表情を向けていた。
もう、由理ちゃんは美実に対して穏やかな表情を見せる事はないのだろう。
大事なものを傷付けられてしまった恐怖を味わい、美実はもう変わる事がないと知ってしまったから、由理ちゃんはもう美実に対して信じる気持ちが消えてしまったんだ。
もう二度と。
『もう、会いたくない』
『……』
何がいけなかったんだろう。
なぜこんなにもすれ違ってしまったんだろう。
何が正しかったのか、何が悪かったのか、どうすればよかったのか、今ではもう何も分からない。
本当の意味での正しさを知るのは無意味なんじゃないかと。
こんなにも虚しいという気持ちになったのは初めてだった。
でも、理由があるとしたらやはり心原の血なのだろうか。
支配されなければこうはならなかったんだと思う。
由理ちゃんは証人の際に立って全てを話した。
もちろん刑罰は楽なものではなかったが、でも家庭環境や由理ちゃんの比較や劣等感などの全ての事情を見た点で、普通の殺人の懲役よりはやや少なめの年数だった。
ただ、1つ気がかりがあるのは、警察に捕まって連れて行かれる際に言っていた言葉。
『どうせあんただってあの人達と同じ運命を辿るんだから。あたしもここあもみんなね。それに不幸な事になるんだから、あんたはいずれ。長生きだってできない、あんたの娘だっていずれね』
その言葉の意味に由理ちゃんは『わかってるわよ、そんな事』とぼそっと呟いた。
それから何日か経った後、私と由理ちゃんはご両親のお墓参りに来ていた。
『ごめんね、お母さんお父さん。ごめんね』
『由理ちゃん』
由理ちゃんはお葬式に一度だけ来てから一度もお参りに訪れていなかった。
きっと、由理ちゃんは今でも気持ちの整理は付いていないのだろう。
美実が捕まった時も、警察から事情を尋ねた時も、美実と面談した時も、裁判で美実と顔を合わせた時も、刑罰が決まった時も、由理ちゃんは一度も美実に対して以前のような心配するような目で見る事はなかった。
由理ちゃんまでもが別人になったような感じだった。
その後、由理ちゃんは自分の家へと戻っていって、暫くして由理ちゃんが訪れた。
『ねえ、由理ちゃん、今日は』
『あのさ』
『ん?』
『私さ、引っ越そうと思うの』
『えっ』
それは、あまりにも唐突だった。
『どこに?』
『東京』
『それって』
私は引っ越しと聞いて、ある考えが脳裏をよぎった。
もしかすれば、由理ちゃんは美実から。
『桜戸さんがね、転勤する事になったの』
『ああ、そっか』
私が単なる早とちりしすぎだったのかもしれない。
ほっとしたのも束の間、私が思っていた考えが、由理ちゃんの口から出てしまう。
『でも、いい機会よね』
『えっ』
『あの人が居ない場所に行けるなら』
『由理ちゃん』
『逃げたと思われてもそれでもいい、でももうあの人と一緒にいた場所には居たくないの。
私、美実の事もう何も信じられない。私、何の為に美実を信じてたんだろう。美実はきっと戻ってくれるとそう思ってたから、だから信じてたんだと思う。でも、あの子は変わってしまったのね、まるで殺人鬼のようにね。それに無理よね、分かっていたから…こうなるって。どんなに抗っても運命に逆らえないんだから』
その時の由理ちゃんの表情は、悔しそうな辛い表情を向けていた。
もう、由理ちゃんは美実に対して穏やかな表情を見せる事はないのだろう。
大事なものを傷付けられてしまった恐怖を味わい、美実はもう変わる事がないと知ってしまったから、由理ちゃんはもう美実に対して信じる気持ちが消えてしまったんだ。
もう二度と。
『もう、会いたくない』
『……』
何がいけなかったんだろう。
なぜこんなにもすれ違ってしまったんだろう。
何が正しかったのか、何が悪かったのか、どうすればよかったのか、今ではもう何も分からない。
本当の意味での正しさを知るのは無意味なんじゃないかと。
こんなにも虚しいという気持ちになったのは初めてだった。
でも、理由があるとしたらやはり心原の血なのだろうか。
支配されなければこうはならなかったんだと思う。


