私はその足で、商店街の雑貨屋さんの一角である、香水コーナーへ駆け込んだ。

その香りを忘れてしまわないうちに、名前を知りたかった。
そうしたら、奥さんであろう隣の女性にさえも勝てる気がしていた。


これは違う。
もっと甘くて、高級感があって…。


店のものは一通り試し尽くしたが、結局分からずじまい。

一度に多様な香りを吸い込んだばかり、鼻がツンとするだけでなく頭痛まで感じる。


自分はなんて馬鹿なんだ、先程から店員さんがこちらを見ているのに。


血眼で香水を嗅ぎ続ける女子高生は目新しいものだったに違いない。


商店街を抜けキンキンに冷えた風に当たると、頭痛も治まってきた。


冷静になった頭は明日のことを想う。
冬休み前日の確認テストがあるんだった…。


これから帰ったら、今日はあの範囲を進めよう。
と、気持ちの悪いほどの暖房がついた電車で考えるも、頭の片隅にはまだあの男性の香りがほのかに残っていた。