「ええ。ここに来るまで、何人かとすれ違

ったけど誰も私の存在に気づかなかった

わ」

「・・・面倒な事になったな」

彼は一瞬だけ頭を抱えたが、立ち上がった

時には既に普段の彼だった。

「ま、自分で何とかする事だな。俺にはど

うも出来ないから」


はぁ!?


「えっ!?いやいや、貴方も視えてるなら

助けてよ!」

「無理なものは無理だ。俺にはどうもして

やれない。じゃあな」

彼は本を小脇に抱え、私を残して図書室を

出て行ってしまった。