美術室に入れば、あの絵の具の匂いが広がっている。 私はこの匂いがすごく落ち着く。 今日は何を描こうか。 悩んでいた時、ガラッと美術室のドアが開いた。 「美紅」 ドキン 顔を見なくてもわかる。 その声の持ち主は、私が好きになった人。 「・・・直生」 「・・・」 「・・・」 私たちは黙ったまま、顔を見つめあっていた。