生物室があるのは東棟。


私の教室があるのは西棟。


移動するのに時間がかかる。


私がひとりで歩いていると肩を掴まれた。


私は驚いて慌てて後ろを見る。


「速水くん!?どうしたの!?びっくりさせないでよ!」


「・・・はぁ。ごめん。」


汗だくになりながら、しかも体操着のままだった。


「着替えないの?」


「市川のこと追いかけてきた」


「え?なんで?」


「さっき、教室行ったんだよ、陸が早瀬とふたりでいたから、市川のこと心配になった。」


「・・・あはは!大丈夫!あれは私が仕向けたことだから!」


「そっか今日はいつもの場所くる?」


「ううん、今日は行かない。油絵描かなきゃいけないから」


「・・・そっか。わかった。頑張れよ」


そう言うと速水くんは西棟の方へ戻って行った。


「速水くんって案外心配性なんだ」


私は小声でボソッと言って、くすっと笑った。


あの速水くんからは意外だなと思った


そして、速水くんに好かれてもらえる女の子は幸せになれるに違いない。


私はなんとなくそう思った。