眞奈はジュリアを応援したくなってきた。
「わかったわ、秘密ね、大丈夫よ!」

 ジュリアはそれを聞いて安心したようだった。
「私たちが友達になれば、もう一人分カウントできるわ。それぞれウィルと五人分のアンドリューも加えられるしね。一気に増えるじゃない。そしたら私たち、もう『友達がいない』とはいえないんじゃなくて?」

「そうね、ウィルだって三人分ぐらいにはカウントできると思うわ。アンドリューの五人にはかなわないけど! そしたらけっこうな人数になるよね」

 眞奈とジュリアは顔を見合わせて笑った。

 眞奈はイギリスに来て、ウィルを抜かしたら、初めて誰かに心を開くことができたような気がした。

 ジュリアもまた、しつけに厳しい生活の中で、対等にそして気軽に話せる年頃の女の子に会えてとてもうれしそうだった。

 でも次の瞬間、ジュリアは悲しげに言った。
「もっとあなたに早く会いたかったわ。だってもうすぐ私、ここからいなくなるんだもの」

「引っ越すの?」

「ええ、結婚したらね。でもいつ結婚できるかまだわからないの。お兄さまやお姉さまたちがすごく反対しているのよ。財産のことがあるから……。でも私、もうすぐ十六歳になるでしょ、たぶんその後正式に話が進むと思うわ。アンドリューは早い方がいいって言うの。アンドリューは軍の将校だからいつどこに行くかわからないし、それに……」

 ところがジュリアが言い終わらないうちに、二人が立ち話をしていたすぐ前の扉の向こうから、女性の興奮した声が響いた。

「なんですって、それじゃだめよ、リチャード。間に合わないわ。早くしないと計画がぶち壊しよ! 五月に侯爵が来たときに相談して最終的にちゃんと決めないと!」

 眞奈は息を飲んだ。こ、これはどういうこと?

 どうやら亡霊はジュリアだけではなく、二人目の亡霊までいるらしい。

 二人目の亡霊が誰かと話しているということは、話し相手である三人目の亡霊もいるということだ。

 しかも言葉の調子からなんだか良からぬことを企てている。