らせん階段のところまで来ると、「あーあ、もう疲れちゃった」と、眞奈は持っていたカバンをどさっと床に置き、階段にちんまり座った。

 眞奈はだんだん自分に腹が立ってきた。

 このままじゃ絶対授業が始まっちゃう! ウィルに恩返しができない。教室にさえ行けない。なんて自分は役立たずなんだろう。

「こんな役立たずな人間なら、もうここにいる価値なんてない。そうよ、亡霊に会った方がまだましね!」、眞奈は心の中で自嘲した。

 しかし、眞奈はすぐにその言葉を後悔することになった。
 役立たずな人間なら亡霊に会ったときなんて、なおさら役に立たないにきまってるのに、と。

 らせん階段の上から何か床を踏みしめる音がして、眞奈はドキッとして顔を上げた。
 
 ブロンドの髪の女の子が下りてこようとしているのが見える。少女は愛らしい微笑みを浮かべて楽しそうにハミングしている。
 そして、あろうことか、淡く光沢あるペールグリーンの古風なロングドレスを身につけている!

 校長先生の「その少女の亡霊は美しい金髪で時代ものの衣装を着ているのよ」と言う声が、眞奈の脳裏にはっきりフラッシュバックされた。

 眞奈は唖然として女の子を見つめた。彼女はだんだんこちらに向かって来る。

 どうしよう、今度こそ本物の亡霊だ、絶対に!!