あれから数日、学校では相変わらず居場所が見つからない私ではあったけれど、そんなことまったく気にならないほど、私は気持ちが浮ついていた。朝いつもより早くに学校に行って、大河がいないか探してみた。休み時間になるたびに、もしかしていると来ているかもしれないと思って、来客の車が止まっていないか、職員室に来てないか、何度も何度も確かめた。放課後も用もないのにだらだらと学校に残って、クラブの生徒が終わる時間まで外ばかり見て過ごした。
大河っていったいいくつぐらいなんだろう?
私とそんなに離れていないっていってたけれど。
大学卒業したばかりぐらいなのかなあ。
私は家に帰って雑誌をぺらぺらとめくりながら、そんなことばかり考えていた。
雑誌はめくってはいたものの、ほとんど頭に入らず、ただ、眺めているだけだった。
大河に会いたい。
もう一度、会いたい。
ペラペラと雑誌をめくっていくと、終わりのところに星占いのコーナーがあった。
普段はそんなところ気にも留めなかったんだけど、相性占いとなっていて、思わず手が止まった。
私と大河の相性ってどうなんだろう?
大河のお誕生日っていつなのかなあ?
私はおとめ座だから…。
ふうん、魚座かおひつじ座の相性がいいんだ。ええと、魚座は2月19日から3月20日生まれで、おひつじ座が3月21日から4月19日生まれかあ。春生まれねえ。大河ってどちらかというと夏のようなイメージだったんだけど。どうなのかなあ。大河が春に生まれていたらいいなあ。そうしたら、相性ピッタリだもの。
でも、もう本当に会うことないのかな?
会うこと…できないのかなあ?
大河ってどこに住んでるだろう?
うちの学校に来ているってことはそう遠くないはずだよね?
あ。
思いついて、カバンの中から国語のテキストを出した。大河の編集したテキスト。あれから国語のない日もずっとカバンの中に入れて持っている。私と大河をつなぐ唯一のものだから。そして、あのもうすでに習い終わった「高校生の直木賞」もあれから何度も何度も読んだ。読んでもうすらすらと暗唱できるほど読み込んだ。習っていた時は気づかなかったけれど、文章のリズムが絶妙だった。
テキストの背表紙に出版社の名前が書いていた。河東出版社。スマホで調べて見たらそう遠くない、知ってる町だった。
ここからだったら電車に乗って一本で行ける。
1時間ぐらいかなあ?
行ってみようか?
大河がいるかも?
会いたい。
でも、大河はどう思うだろう?
私のこと覚えてないかも。私まだ自分の名前も教えてないんだった。ちゃんと伝えておけばよかった。名前も知らない人に急に行かれても迷惑だよね?
でも、このまま会えないのは嫌だ。
どうしようか?
もし私のこと覚えてなかったら…。
冷たくあしらわれたら…
絶望的だ。
そう思うと私はとても勇気が出せなかった。
それでも、何度も何度も学校内を探したり、放課後遅くまで残ったりということは諦められないでいた。
