「ちょっと、何? 今の人!凄くいい男!」

「うん。格好いいよね。なんか、次元が違う気がする。目の保養だね。」
そう言って、クスッと笑った。

それからまた、綾と二人でいろいろ話をしていたら、

「そう言えばさ、営業部の先輩が、今度、いろんな部所の人と交流会しようって言ってた。まぁ、要は合コンなんだけどさ。優香里も行く?」
と、聞かれる。

「えっ、合コン!?」
思わず大きな声を出してしまい、

「しっ!優香里、声大きいよ。」
と、たしなめられる。

「ごめん。」
声を落として謝った。

「人数とか、いつにするとか、まだ何も決まってないんだけどね。優香里も考えといてよ。そろそろ帰ろうか。」

「うん。」

会計をしようとすると、店員さんに、既に払ってもらってると言われる。
いつの間にか長野さんが、私たちの分の会計も済ませていたらしい。

「えぇ!ちょっと優香里、長野さんって何者よ? 本当に、お兄さんの友達ってだけなの?」
綾にヒソヒソと聞かれる。

「えっと、うん。お礼言ってくる。」

綾と二人で、長野さんの座る席に向かう。長野さんと一緒にいた男性は帰ったらしく一人だ。

「あ、あの、長野さん。えっと、ご馳走さまでした。」
そう言って、ペコリと頭を下げる。

長野さんはニッコリ笑って、こちらに顔を向けた。

「もう帰るの? じゃあ、送ってくよ。坂口さんは、家はどっち方面かな?」

「あっ、私、優香里とは反対方向で…。」

「じゃあ、タクシー2台呼ぶね。そこ座って待ってて。」

長野さんが、スマホを手に外へ出て行った。

綾がニヤニヤしながら、こちらに顔を向け
「優香里ちゃ~ん。彼氏? 彼氏じゃないの~? なんかもう、こっちまでドキドキしちゃうんですけど~。」
と、言ってくる。

「いや、えっと…、火曜日、初めて会って…。」
私もドキドキしてるんですけど、と思いながら、綾を見ていると、長野さんが戻って来た。

「タクシー来たよ。どうぞ。」
と言ってくれる。

「「ありがとうございます。」」
綾と二人で、そう言って立ち上がると、長野さんの後をついて行く。

長野さんが、私たちの方を振り返り、
「ごめんね。さっき、話聞こえちゃったんだけど。合コン、優香里ちゃんは不参加にしてもらってもいいかな? ゆっくり口説こうと思ってるところなんだ。」

そう言って、いたずらっぽく綾を見る。