金曜日、お昼に、オフィスの休憩室でサンドイッチを食べていたら、同期の綾に声をかけられた。

「お疲れ~。優香里、今夜なにか予定ある?」

「お疲れ。今夜? 何もないけど…。どうかした?」

「ご飯食べに行こうよ。割引チケット貰ったの。フフッ。」

そう言って、会社近くのダイニングバーのチケットを、ヒラヒラと見せてくれる。

「えぇ~!どうしたのこれ? あそこ料理も美味しいし、落ち着いた雰囲気でいいよね。」

「でしょ。営業の先輩から貰ったの。今夜どう?」

「行く。行く。」

「じゃあ、18時、オフィスビルの休憩ラウンジで待ち合わせでいいかな?」

「了解~。」

「じゃあ、後でね。」
手を振って、綾が休憩室から出て行った。

 
       *


終業後、綾と待ち合わせてダイニングバーに行く。

オーダーを済ませて、ドリンクのグラスを合わせる。

「「かんぱ~い!!」」

数種類の料理をシェアして食べる。

「はぁ~、幸せ。」

「美味しいね。」

綾とは同期入社で、新入社員研修のグループが一緒だったこともあり、すぐに仲良くなった。
のんびりした性格の私とは違って、ハキハキした美人さんだ。

配属は、私が経理、綾がマーケティングで部所は違うが、ずっと仲良くしている。

仕事の話や、恋ばな、グルメのことなど、いろんな話をしながら、美味しい料理を堪能した。

そろそろお腹いっぱいになってきたが、話はまだ尽きない。更にカクテルをオーダーする。

「ちょっと飲み過ぎかなぁ。」
なんだかフワフワしてきた。

「優香里は、アルコールあんまり強くないんだから、次はノンアルコールにしたほうがいいよ。」

「だねぇ。ついつい楽しくて、気持ちよくて…。明日、お休みだから気が緩んじゃったね。」

綾と二人、フワフワしながら、とりとめのない話をしていたら、

「あれ? 優香里ちゃん?」

と、男性の声。振り返って見ると、スーツ姿の長野さん。

!!!!!

「長野さん!今晩は。」

「やっぱり、優香里ちゃんだ。今晩は。お友だちと一緒かな?」

「はい。会社の同期の坂口綾さんです。」
そう言ってから、

「えっと、こちら兄の友人の長野慧さん。」
と、綾に長野さんを紹介する。

挨拶をすると、
「じゃあね。」
と、長野さんは近くのカウンター席に行った。
スーツ姿の男性の隣。どうやら長野さんも二人で来ているようだ。