ランチは、映画館の隣のショッピングモールにある、レストラン街の洋食屋さんに行った。

長野さんが予約をしておいてくれたらしく、すぐにテーブルに案内された。

ゆったりとした半個室になっていて、落ち着いた雰囲気だ。

注文を済ませると、長野さんがこちらを見て優しく微笑んだ。

「昨日言ったこと、覚えてるかな?」

まっすぐこちらを見て、そう問いかけられる。

やっぱりイケメンだ~。綺麗な顔だなぁ…声もいいなぁ。
長野さんの顔を見ながら、そんなことを考えていた。

「優香里ちゃん?」

小首をかしげる様子が、格好いいのになんだか可愛い。
昨日言ったことって…何だっけ?

「えっと…」

無言で長野さんを見つめてしまう。

長野さんが、フッと笑って
「合コンは不参加にして欲しいってことと、これから優香里ちゃんを口説くって言ったこと。」

「あっ…」

そういえば、昨日…。
今日のことで頭がいっぱいで、朝起きたらすっかり忘れてた。

「……。」
ドクンと心臓の鼓動が激しくなる。

「火曜日に初めて会ったって、優香里ちゃんは思ってるかもしれないけど、……初めて会ったのは、もう何年も前なんだ。」

「えっ?」
火曜日が初めてじゃない?
ビックリして、長野さんをまじまじと見る。

「と言っても、その時はほんの一言、言葉を交わしただけだけと。」
そう言って、長野さんが笑った。

「それ以降会ったことはないけど、健からよく優香里ちゃんの話は聞いてたよ。健と一緒にいる優香里ちゃんを見かけたこともあったし。」

「そうなんですか。」
なんとなく呆けた顔で、長野さんを見てしまう。

「うん。だから火曜日に優香里ちゃんと会った時も、以前からの知り合いのように感じたし、実際に話してみても、なんかしっくりくるっていうか…。」

そこで一旦言葉を切って、また、まっすぐにこちらを見つめる。

「もっと一緒にいたいって思ったんだ。」

私の心臓が大暴れを始める。
胸キュンなんて可愛いものではなく、なんだか苦しい。

このイケメンから繰り出される言葉は破壊力が半端なくて、何かを言おうと口を開くが言葉が出てこない。

ただビックリした顔で、長野さんを見る。

「優香里ちゃんにとっては、会ったばかりみたいなものだから、これ以上言われても困るかな?」

「……。」

「今、一緒にいて嫌とかいう気持ちはないかな?」

「それはないです!私も一緒にいて楽しいというか…。」

そう言うと、長野さんは嬉しそうに笑った。

「ありがとう。ランチの前にこんな話をしてごめんね。でも、折角のデートだから、ちゃんと俺のこと意識して欲しかったんだ。」

「はい。」
長野さんを見つめて返事をする。

「じゃあ今日は、いっぱい意識して。そしてこれからの未来もちょっと考えてデートしてくれるかな?」

そう言った長野さんは、やっぱりイケメンさんだった。